a picture is worth a thousand words

その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

【映画レビュー】三度目の殺人【40点】

俳優の演技は秀逸かつ自然だが、僕には合いませんでした

三度目の殺人【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

三度目の殺人【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

 
・短評

提示された事象の中から真相を鑑賞者自身で考えるタイプの映画

 

・あらすじ

多摩川の河川敷で頭部を殴られ、燃やされた死体が発見される。
容疑者として逮捕、起訴された殺人の前科がある三隅(役所広司)を弁護することになった重盛(福山雅治)は会うたびに証言の変わる三隅に翻弄されながらも事件の弁護をしていく……。

 

・感想

是枝裕和監督の『海街diary』の空気感や夏帆の魅力の引き出し方に惹かれ、何やらサスペンス感の強い今作を観に行きました。

 

予告編を見た段階では、金や実績目的の福山雅治演じる弁護士が真実を求め始めるようになると言う結構好きな展開でもありそうでしたし、
また同監督の映画『そして父になる』ではエリートとして生きてきて、悪気はないが無意識に自分以外を見下す父親が変化していく様子を福山雅治が好演していて期待感が大きかったです。

 

で、感想なのですが、一言で表すのなら「僕には合わなかった」です。

 

ネットのレビューを見る限り高評価が多いようですし、その理由も理解できます。


まず、俳優の演技はやはり素晴らしいものでした。

 

福山雅治は予告編で見た通りのキャラクタを好演していて、真実なんてどうでも良いと考えていた弁護士が次第に真実を求め始める様子は心を打つものがありますし、
役所広司の底の知れない、感情を高ぶらせる様子を見せてもなお何を考えているのかが全く掴めない三隅も素晴らしく、マルちゃん製麵だけじゃないな、と思いました。
シン・ゴジラ』で話題になった市川実日子も僕のあまり好きではない広瀬すずも魅力たっぷりであったのは間違いありません。

 

しかし、この作品は合う合わないが大きく出る作品だと思います。
その要素はやはり「結末まで観ても真相が分からない」部分でしょう。

 

先日ブルーレイを借りて鑑賞した『哭声/コクソン』もこのジャンルではありますが、この手の作品は鑑賞者自身の考察で物語のオチを考える必要があります。


スタッフロールが始まった際には「どうりで放りっぱなしの伏線が多いわけだ」と感じてしまいましたが、それにしても投げっぱなしの伏線が多すぎるように思えます。

 

三隅が起こした一回目の殺人の謎は本質的に二回目の殺人の謎と同じであると考えているので、投げっぱなしと言うよりも問題提起なのだと思いますが、それにしても伏線の放置が多すぎます。


なかでも一番もやもやするのは重盛が話したことのない事実を、拘置所にいる三隅が知っていると言う部分です。

 

2回目のセリフは満島真之介演じる川島とのやり取りの際でしか発言していないので、恐らく川島が教えたのでしょうがそれにしても矛盾が多くなってしまいますし、川島から吉田鋼太郎演じる摂津に情報が流れたとしても、摂津がその情報を三隅に教えるメリットが分かりません。

 

あれ?色々考えてると少し面白く感じてきたぞ……。

 

と、まあそんな感じになっては来ましたが、やはり僕自身は作品内に明確な答えが欲しい派だったりします。
読者自身が犯人を推理する、東野圭吾の『どちらかが彼女を殺した』は大好きな作品ですが、あの作品には想像を越える明確な答えが存在しますし、
物語の完結の上で、考察の余地を残す映画は好きなのですが、全てを鑑賞者の考察に委ねる作品はあまり好きではないことに気が付きました。

 

しかし、そう言った作品が大好きな方には演者の好演も合わせおススメできる映画であると思いますのでぜひぜひご覧になってみてください。

 

ネットで調べた感じでは答えが十人十色だったので誰か答えっぽいやつを教えてください……。

【映画レビュー】羊たちの沈黙【80点】

アカデミー賞主要5部門を受賞した猟奇殺人捜査映画の金字塔

・短評

アンソニー・ホプキンスの強烈な存在感と以後の映画に影響を与えた名作

 

・あらすじ

女性の皮膚が剥がされるという連続猟奇事件が発生。
クアンティコにあるFBIの訓練校で優秀な成績を収めるクラリススターリング(ジョディ・フォスター)はこの事件の解決の糸口を探るため、
優秀な精神科医であり収監されている凶悪な連続殺人鬼ハンニバル・レクターアンソニー・ホプキンス)に助言を求めるが……。

 

・感想

知り合いと『ドクター・ストレンジ』の話しをしているなかで、敵役を勤めるマッツ・ミケルセンが海外ドラマでハンニバルを演じているよ、と話題になり、

そう言えば、大衆娯楽や猟奇殺人ものがアカデミー賞を取りにくいなかで、アカデミー賞の主演賞や作品賞を含む5部門を制した『羊たちの沈黙』を1回しか観たことがないと気づき、再鑑賞しました。

 

この作品の続編である『ハンニバル』はグロ描写が生々しすぎて僕はあまり好きではないのですが、
今作はグロ描写が何となく少なかったような気がしないでもないし面白かった気がする、と言う恐ろしく曖昧な記憶しか無かったのですが、その記憶は当たっていました。

 

この映画には大きく分けて3つの見どころがあると僕は考えています。

 

その一つ目はやはり、この映画を語る上で外すことの出来ない「ハンニバル・レクター」と言うキャラクタでしょう。
猟奇性を前面に押し出したキャラクタが数多くいる中で、ハンニバルが観客の心を掴んだのは理知的かつ紳士的な態度。
今作のメインの犯人であるバッファロー・ビルのように見るからに分かる狂人ではなく、罵倒する言葉を使わず、憤慨するような感情の高ぶりも見せない、清廉な殺人鬼という印象が僅か10数分の登場で頭にこびりつきます。

 

二つ目に注目したいのは「捜査ものとしての面白さ」です。
確かにこの映画の魅力はハンニバルと言う登場人物の強烈さだとは思いますが、同時に猟奇事件の捜査ものとしても高い完成度かつ、その後の作品に多大な影響を与えているとさえ言えます。
レクターによるプロファイリングで徐々に明らかになる事件の背景、そして終盤で明らかになるレクターの見つけた意外な事件の真相、
プロファイリングと言う概念を日本に流行させたと言うことでも有名ですが、殺人鬼を事件捜査に使う、など『サイコメトラーEIJI』などの作品は明らかに影響を受けていそうです。

 

そして三つ目の見どころは「クラリスハンニバルの関係性」です。
最初はクラリスによる協力要請を拒否していたハンニバルがとある一件により、クラリスに自分の事を語らせる代わりに事件への協力を始めます。
最初こそ、興味本位だっただろうハンニバルクラリスのあるトラウマを知り、カウンセリングのようになっていく2人の関係性は様々な捉え方をすることが出来、一番大好きな要素だったりします。

 

今再鑑賞してみると、どうしても既視感がたっぷりになってしまう作品ではありますがこのように注目したい要素はまだまだあり、この映画の奥深さを感じます。
近年の映画好きだからこそおススメしたい金字塔のような映画です。

【映画レビュー】SP 革命篇【78点】

係長は止めて欲しいんですよ、俺たちに

SP 革命篇 Blu-ray特別版

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・短評

井上と尾形の関係性がドラマファンには熱い最終章

 

・あらすじ

議会中の国会議事堂が尾形総一郎(堤真一)率いるSPと武装集団によって占拠された。
尾形の企みによって難を逃れた井上薫岡田准一)と警護課のメンバーは尾形が自身を見出した理由と自分たちが難を逃れた意味に気づき、行動を開始する……。

 

・感想

以前から何度も推させていただいているこの作品。
そのアクションの魅力はもう説明するのはくどすぎるので、今回は物語の魅力について書いていこうと思います。

 

ドラマから続くこのシリーズの魅力は何と言っても主人公チームの関係性です。

 

岡田准一演じる井上薫は幼少の頃に両親を目の前で殺害された経験から超人的な第六感で警護の仕事を全うする一方でその能力を使い勝手に動くので組織に勤める人間としてはいつも腫れ物扱いされ、類まれなる資質を理解されません。
しかし、そんな井上の資質と正義の心を見抜き警護課に抜擢したのが堤真一演じる尾形総一郎です。

 

この二人の信頼関係はドラマシリーズで丁寧に描かれたのですが、衝撃的だったのは尾形が実は「テロリスト側の人間」であったと最終話で分かることでした。

お互いの信頼関係が崩れ、危険を察知する井上の感覚が常に鳴り響き井上の尾形への警戒が露骨になる様子が描かれたのが前作の『SP 野望篇』。

SP 野望篇 Blu-ray特別版

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そして、今作では遂に始まった尾形の計画とその計画を止めるために自分が選ばれたと理解した井上たちの行動が描かれているのですがこれがとにかく熱い。


井上は終始尾形の行動を止めるために動きますが、一方で尾形は井上に対し躊躇なく発砲します。
銃を向けるだけでなかなか撃たない前作に比べ、信頼していた部下にさえ容赦なく発砲する尾形はとにかく恐ろしく感じると同時に、井上なら避けるだろうと言う歪な信頼の表れなのではないかとも勘ぐってしまいます。

 

他にも香川照之演じる政治家、伊達國雄たちのいやらしさもこの映画を盛り上げています。
尾形の革命行為に乗っかっておきながら、その裏では尾形を踏み台にする計画を立てる伊達、それに反して井上と言う計画の味方ではないジョーカーを施設内に招き入れている尾形のどちらの計画が成就するのか、見どころの1つになっています。

 

また他の警護課のメンバーの魅力も並大抵ではなく、
男勝りな性格で暴力的ではあるが井上の実力を認め常に気にかけている笹本(真木よう子)、
独断専行の井上の行動を問題視し疫病神扱いしているがだからこそ自分がいなければいけないと考えている山本(松尾諭)、
サブリーダー的存在で全員を見守る石田(神尾佑)のそれぞれの井上に対する気持ちが分かる前日譚スペシャルドラマ『SP 革命前日』は戦闘シーンこそないものの今作をより面白くする作品としておすすめです。
山本と石田の「仕事はやめたいけど、後輩(井上)が一人前になるまでは支えたい」と言うセリフは特にシリーズを通しても大好きだったりします。

 

と、まあ、ここまで語りましたけど、純粋にこのシリーズが好きなだけで正当な評価は間違いなく出来ていません。
正直観ていただく他にはないのですが本当に大好きなので続編を待ち望んでいます……。

【映画レビュー】SP 野望篇【50点】

アクションも物語も良いが、細部が雑 

SP 野望篇 DVD特別版

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・短評

岡田くんの身体を張ったガチなアクションに反比例するリアリティ

 

・あらすじ

自分を見出し、何があっても信頼してくれていた上司の尾形総一郎(堤真一)の悪意に影響を受け、日々体調が悪化する井上薫岡田准一)。
一方で、最も勢いのある政治家、伊達國雄(香川照之)を含めた尾形の革命のシナリオは着実に進みつつあった……。

 

・感想

おいおいおい。
以前の記事でSPを誉めまくっていたのに点数低くない?と思った方も多くいらっしゃると思います。

 

そうなんです。
個人的にはドラマシリーズと最終作にあたる『SP 革命篇』は好きなのですが、最終作の前章にあたる今作はあまり好きではありません。
その理由が「リアリティの完全な欠如」でした。

 

序盤のチェイスシーンはやや長いですが、岡田くんの身体を張った追跡を楽しめますし特にこれといった違和感は覚えませんでした。


問題は物語の終盤における官房長官の護送シーンです。

 

敵が銃を持っているのは構いません。政府高官や警察などの上層部などが秘密裏に率いるテロ集団ですし銃くらい普通にあるでしょう。
しかし、せっかく銃を持ってきたのに全く撃ちません。
いや、実際は撃ってますけど窓ガラスを割ったり車のタイヤをパンクさせるくらいしか出来てません。そういう道具として持ってきたの?と錯覚するほど撃ちませんし実際に警護課のメンバーに銃を突き付けても撃ちませんでした。

 

一方で、主人公側も銃を向けるだけでこちらまた撃ちません。
まあ、いくらテロリストとは言え相手を殺害してしまうのはマズいのかもしれませんが、
その割には敵がボンネットに乗っている状態でフロントガラスを割るために射撃しますし(たまたま敵の持っていた消火器に当たっただけで済んだ)、
爆弾を敵が乗っている車の下に投げ返したりしていますし基準はガバガバのようです。

 

それ以外にも敵がとてもプロの殺し屋集団とは思えない行動をとります。


敵はとある目的を隠すために官房長官を狙ったフリで警護課のメンバーを襲うのですが、実際に官房長官に危害を与えられるチャンスが来ても凄むだけで一切危害を加えるそぶりすら見せないのですぐ岡田くんにバレてしまいます(素人かよこいつら)。


それに遠藤要演じる敵が警護課のメンバーを後ろからナイフで襲ったにも関わらず、他の敵と戦ってる間は待ってくれる謎のフェアプレイ精神ですしもう何が何やら分かりません。

 

さらに深夜とはいえ発砲と爆発が起きても野次馬も警察の応援は一切来ませんし僕の思う東京都とはかなりイメージが違います。

もう言い出すとキリがないのでこのあたりにしておきますが。

 

しかし、ここまでけなしておいてではありますが良い点も多くあります。


まず、この作品のために身体を鍛え上げた主演の岡田准一こと井上のチェイスを含めた戦闘シーンは格好良い以外の感想が出ません。


それに、堤真一香川照之など全体を通し演技派の俳優を揃えているため演技に何の問題もなく、国家を転覆させるような壮大な計画に引き込まれ、尾形と井上の関係性への言及も深いものとなっています。

 

それだけにやはり終盤の展開のリアリティの無さが悪目立ちし、足を引っ張ってしまっている感が勿体ないと思う作品です。

【映画レビュー】エビデンス 全滅【60点】

サスペンスとして観れば一見の価値あり

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・短評

ホラーやスプラッタとして観ると退屈だが、サスペンスとして観ると筋が通った佳作

 

・あらすじ

ラスベガス行きのバスが砂漠地帯で横転し、行き場を失った乗客たちが何者かにバーナー等の凶器を使って殺害された。

事件現場から事件当時の映像を見つけた警察は映像から殺人犯の正体を突き止めようとする…。

 

・感想

僕はあまりスプラッタやスリラー映画と言った作品は鑑賞しません。

 

それでも『13日の金曜日』のような名作と呼ばれる作品は鑑賞しますし、『サプライズ』のような話題となった作品も取り敢えず観ています。

一方で、POV方式(主観ショット)で撮影された映画はどのジャンルでも割と好きで、

ジェイク・ギレンホール主演の『エンド・オブ・ウォッチ』は人生の中で見た警察映画の中でもトップ3に入ります。

そんなわけで、今回は低予算ながらも話題となったPOV方式の映画『エビデンス 全滅』を鑑賞しました。

 

事件の当時の様子を被害者たちが撮影した動画を、後に警察の人間が検証すると言う内容なので、

厳密にはPOV方式の映画とは言わないのかもしれませんが、発想が独特で静かな人気を集めていました。

 

ざっくりとした全体の印象は解説のある『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と言った感じで、

POV方式の欠点でもある「観測者のみの情報ゆえの物語の分かりくさ」を警察による検証、と言う設定で上手くカバーしています。

 

しかし、やはりこの映画は「溶接用のマスクをした狂人が人を殺す」と言うスリラー映画だと思っていたので、

過激なシーンも数えるほどしかなく、加えて見難いので中盤までは少し退屈でした。

 

ですが、この映画の本当の見所は事件の真相にこそあります。

 

何転もする犯人候補も面白味ではありますが、真犯人の正体を知ると、

それまでの映像にあった違和感の正体が分かり、「あー、なるほど」となります。

 

やや見せ方が下手に感じてしまうのが残念ではありますが、丁寧に張られた伏線が効くラストでもありサスペンス好きの方には一見の価値がある作品だと思います。

【映画レビュー】バーニング・オーシャン【75点】

最悪の人災を圧倒的な迫力で描く実話映画 

・短評

実話と聞いて恐ろしくなるほどの圧倒的な迫力の脱出劇

 

・あらすじ

メキシコ湾に浮かぶ石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」。

予定の稼働日からかなり遅れ、焦りを感じた本社の幹部ヴィドリン(ジョン・マルコヴィッチ)はしっかりと安全性が確認できない状態で施設を稼働してしまう。

そして、誰もが恐れていた逆流事故が発生し陸地まで80kmあるこの施設は海上で炎上する…。

 

・感想

ピーター・バーグ監督&マーク・ウォールバーグ主演の実話である今作。

 

実は僕はあまりこの作品に期待していませんでした。

それは同じタッグで実話を描いた『パトリオット・デイ』に心を既にやられていたからです。

パトリオット・デイ』では実際に起きたテロであるボストンマラソン爆破事件の顛末が描かれていましたが、

やはり再現されたテロのシーンは重く、子供の死体をズーッと見つめる警察官の姿に精神的に耐えられずとにかく映画館を出た後は辛いと言う気持ち以外があまり出てこなかったのです。

 

最初に言って起きますが、今作で描かれるメキシコ湾に原油流失事故も11人の犠牲者が出ており、

スタッフロール前に表示される亡くなった人の生前の写真は胸を打つものがあります。

 

この映画は事故の様子と炎上する海上施設からの脱出がど迫力のスケールで描かれており、パニック映画としても観る前の想像を遥かに絶するスケールとハラハラ感があり鑑賞者を退屈させません。

 

工期の短縮と耐久テストの短縮を命じるヴィドリンの登場とテストの重要性を訴えるカート・ラッセル演じる現場主任の対立。

そして、案の定の逆流事故からの施設炎上。

マーク・ウォールバーグ演じるマイクの活躍、現場の作業員たちによる救助や被害の封じ込めなど目まぐるしい展開に手に汗握りハラハラドキドキしながら最後まで鑑賞すると、そこで表示される実際の犠牲者の名前の数々。

 

素直に楽しかったと言えず、現実に引き戻されたような苦しさがありました。

しかし、映画と言う媒体で娯楽要素を盛り込み実話を描くことで悲劇を二度と繰り返さないように世間に認知させる目的であれば、

この映画ほどその目的に真摯に取り組んだものはないのでは、と思えました。

【映画レビュー】ダンケルク【70点】

戦地から脱するため、仲間を救うため、戦地で動く男たち

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・短評

ややスケールの大きさが伝わらなかったが前線の恐怖感が嫌と言うほど伝わる作品

 

・あらすじ

ドイツの猛攻によりフランス北部のダンケルクに取り残されたイギリス・フランス連合軍40万人の兵士たち。
絶望的な状況下からの脱出を図る兵士、兵士を救うためダンケルクへ向かう商船、救援のため戦地へ向かうパイロット、それぞれの戦いが始まる…。

 

・感想

戦争を知らない世代の僕ですが戦争映画は比較的よく観ます。
実際に戦地に行った人が鑑賞し、失神する人まで出たとされる『プライベート・ライアン』や戦車乗りの話を描いた『フューリー』、
そして今年にはアカデミー賞で話題となった『ハクソー・リッジ』など様々な戦争映画で、戦地の恐ろしさを感じてきました。

しかし、『インターステラー』や『ダークナイト』で有名なクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』では全く違うリアルな「戦地」を感じることができました。

 

メインで描かれることになる、戦地からの脱出を目指す兵士のトミーは『プライベート・ライアン』や『フューリー』で描かれるような一流の軍人でも無いし、『ハクソー・リッジ』のように信念を持っているわけではありません。

そんな一兵卒がただ故郷に帰りたい想いを胸に次々と真横にいた兵士すら死んでいくような絶望的な状況下でもがきます。

 

映画開始10分以内からその絶望的な状況の演出が上手く「自分が最初に死ななかったのはただ運が良かっただけ」と突きつけてくるような展開が続き、
上映時間の間トミーに寄り添った鑑賞者にも終盤のとある人物のセリフが活きてきます。

 

一方で、戦闘機スピットファイアに乗るパイロットのファリアの格好良さにも感銘を受けました。

劇中でファリアは「とある決断」をするのですがそれを促すようなセリフは一切なく、
彼が何を考え行動に移したのかが全て観ている人間に委ねられていたことがこの映画の最大の特徴なのではないかと思います。

 

しかし、「戦地で戦う人の目線から描いた映画」と言うコンセプトからは仕方ないことなのですが、
ダンケルクで行われた最大規模の脱出作戦」と言う印象はどうしても薄く、30万人が脱出したと言われても体感的には数千人も逃げてないような気がして、
スケールの大きさや奇跡の脱出さはあまり伝わってきませんでした…。

 

戦争を俯瞰ではなく、主観で捉えた間違いのない戦争映画ではありますが、
実話や脱出作戦の華麗さを期待する人には期待外れな作品となってしまうかもしれません。