【映画レビュー】IT “それ”が見えたら、終わり。【75点】
仲間のため恐怖に立ち向かう、子供たちの成長の物語
・短評
怖さに関しては割とマイルドなので、ホラーより物語を主軸に映画を観たい人にオススメ
・あらすじ
子供を中心に異常な数の行方不明者が出る街に住むビル(ジェイデン・リーバハー)は突如弟が姿を消して以降、学友たちとその行方を探し続けていた。
一方、親からの異常な愛情や学友たちからのいじめを受けるベバリー(ソフィア・リリス)は学校内で流れる自身に対する悪質な噂を意に介さないビルたちと行動を共にするようになり……。
・感想
1986年に刊行されたスティーヴン・キングによる小説『IT』を2度目の映像化作品。
スティーヴン・キングと言えば『キャリー』『シャイニング』『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』など映像化され、大ヒットとなった作品が山のようにあるレジェンド作家の1人です。
来年には彼の著書シリーズである『ダークタワー』が実写化されるなど、映画界では常にスティーヴン・キングフィーバーが起きています。
そんな彼が今回の実写化に対し大絶賛をした、と話題となっていたので今作に興味はあったのですが、実はかなりのビビりである自分はBlu-rayが出るまでいいやと鑑賞を避けていたのです。
それもそのはず、僕は「怖い」は大丈夫なのですが「ビックリ」がとにかくダメで、今作は公開当初から「音や視覚でビックリさせる演出の多いお化け屋敷みたいな作品」とのレビューもチラホラ見かけていたため完全にスルーを決めていました。
しかし、職場の後輩や映画好きの方々の「見ないのはおかしい」と言う圧力に屈し、先日映画館に足を運ぶことになりました。
当日はあまりのビビりぶりに、いつでも脱出できるように出口に近い末端の座席を確保していたレベルの僕でしたが、ふたを開けてみるとビックリ、そこまで怖い映画ではありませんでした。
もちろん「ハードルを上げすぎていたためにあまり怖く感じなかった」だけで、随所随所に怖い部分はあるのですが、
意外と良く喋るペニーワイス(ピエロ)、合間合間に気の抜けるようなセリフを吐く面白少年、子供たちに袋叩きにされる恐怖の対象であるペニーワイス(ピエロ)など、面白おかしい部分も多く、
音でビビらせる演出も緊張感の煽りにはよく使われますが、実際に突然出てくるシーン自体は数えるほどしかなく、苦手な僕でも充分に耐えれるものでした。
逆に言えばその辺りの要素は、ホラー映画が好きな人にはマイナス点ではあると思います。
ですが、「理不尽」に「脈拍なく」ペニーワイスに襲われる恐怖感は場面を跨ぐほど蓄積され、1人になることへの恐怖は充分に味わえると思います。
そして、この映画は「ホラー版『スタンド・バイ・ミー』」と言われるのも頷けるほどの成長物語で、
「負け犬」と呼ばれる主人公たちが、出会いや葛藤を通して仲間や家族のために恐怖の対象であるペニーワイスに立ち向かうことを決めていきます。
ただのホラー映画では感じえない、子供の時分の冒険譚を感じることの出来る作品で、「夏」や「想い出」と言うワードに心惹かれる人には、例えホラーが苦手でも映画館に足を運んで欲しく感じました。
【映画レビュー】ラストスタンド【78点】
辺鄙な田舎町、そこが最後の砦となった
・短評
シンプルなストーリーと緻密な作戦、アクションはやや物足りないが間違いなくシュワちゃん映画
・あらすじ
メキシコとの国境付近にある田舎町ソマートンで保安官を勤めるレイ(アーノルド・シュワルツェネッガー)のもとに殺人事件の知らせが入る。
一方、FBIでは移送中に逃走した麻薬王ガブリエル(エドゥアルド・ノリエガ)をメキシコへと渡らせないために必死の追走を行っていた……。
・感想
アーノルド・シュワルツェネッガーが州知事を引退以降、本格的に俳優業に復帰した作品。
2013年に公開され映画館に足を運んだ映画ですが、今回で4度目の鑑賞になりましたがやはり好きなタイプの作品でした。
初回鑑賞時は「肝心のシュワルツェネッガーのアクションが少ない」と不満にも感じたのですが、再度鑑賞するとこの映画のテンポの良さに驚きます。
登場人物の軽い紹介、麻薬王ガブリエルの逃走、田舎町での殺人事件、FBIの麻薬王の追跡、と話は停滞することなく進み辺鄙な田舎町での殺人事件とFBIの逃走劇が1つに重なる秀逸な展開を見せます。
自身に絶対の自信を持っているガブリエルのそれを裏付ける凄みと凶悪さ、田舎町を守る保安官レイの正義感と抜け目のなさも丁寧に描かれ、終盤で2人が相まみえるシーンは初対面にも関わらずとても熱くなります。
脇役にも魅力的な登場人物が多く、事件の起きない田舎町に辟易する若手保安官、テンガロンハットを被るおじさん保安官、文武両道を兼ね備えた才人だったが酒と暴力に溺れた若者、町と秩序を守るため命をかける女性保安官、銃器を集めることが趣味のお笑い担当など多種多様な人物が銃を取り戦う後半は、もはや現代版『マグニフィセント・セブン』とも言えます。
そして、もちろん我らがシュワルツェネッガーも大活躍。
復帰作だからかアクションの量はやや控えめではあるのですが、麻薬王に立ちふさがる最後の砦としての重圧感は尋常ではなく、緻密な計画をたてた麻薬王が敵役にも関わらず可哀想にすら感じます。
シュワルツェネッガー映画にありがちな、物語はどうでも良いからとにかく派手な映画にしよう!と言うはっちゃけぶりは少なく、むしろ以前に紹介した『大脱出』と同様に物語展開にもかなり尽力したことがうかがえる映画ですので、
雑なシナリオが嫌いな物語重視で映画を選んでいる人にもオススメできる、入門シュワちゃん映画です。
【映画レビュー】リアル鬼ごっこ【60点】
なかなか豪華なメンツが出そろう異色アクションSF
・短評
設定矛盾は目立つもののパルクールを取り入れたアクションが当時の邦画として異質
・あらすじ
全国で佐藤姓の人間が不審死する事件が相次いでいた。
不良の佐藤翼(石田卓也)は幼馴染でありヤクザの小間使いである佐藤洋(大東俊介)との抗争中に異世界に飛ばされてしまう。
そこでは、同じような日本で佐藤姓の人のみが命を狙われる「リアル鬼ごっこ」が開催されていて……。
・感想
2001年に自費出版として刊行され、「鬼ごっこを題材にしたデスゲーム」と言う設定が10代を中心に話題となり莫大な売れ行きを記録した山田悠介の同名小説を2008年に実写化した作品。
とは言え、今作以降の実写化はドラマ版を除くと「鬼ごっこを題材にしたデスゲーム」部分以外はほとんどオリジナルとなっています。
高校生くらいの時分で映画館に観に行った当初は「B級映画w」と内心ちょっとバカにしていたのですが、いま改めて鑑賞すると異質な要素が色々と目につきます。
佐藤翼の元いた世界とリアル鬼ごっこが開催される世界にはそれぞれ同じ人間がいて、そのどちらか片方でその人が死亡するともう片方の世界でも何らかの理由で死亡すると言う設定を基準に物語が進んでいきます。
昔はふーんとしか思わなかったこの設定ですが、再鑑賞してみるとなかなかに優秀な設定です。
パラレルワールドと言うかなり説明が難しい内容を簡単に説明出来ていますし、佐藤翼がパラレルワールドで奮闘しなければいけない理由もしっかりと用意出来ていてオリジナル展開の中でもかなり秀逸な設定に感じました。
アクション面としては主人公の佐藤翼のアクションにはフリーランニングことパルクールが使われています。
バランスやスピードを重視するパルクールは戦闘よりも移動の手段にこそ向いているものであり、鬼ごっこと言う分野にはこれ以上ないほどに映えます。
しかも、『SP』や『HiGH&LOW』でようやく邦画にも取り入れ始められて来た、と感じたパルクールが今よりも10年ほど前に採用されていることに驚きを隠せませんでした。
石田卓也、谷村美月、大東俊介、吹越満、柄本明と今観ると俳優陣もとても豪華で最初に観た時と感想が180度変わるようなものでしたが、やはりパラレルワールドと言う設定の難しさからツッコミどころはかなり多いです。
主人公の性格も直情的なバカと言う感じで魅力を多くは感じませんし、細部の設定やキャラの練りこみは荒削りと感じました。
しかし、ざっくりと観るにはなかなかの作品で光るものを感じる作品だったのは確かでした。
10月のオススメ作品記事
こんにちは、いとです。
せっかく(ほぼ)毎日ブログを更新しているので、月毎のとにかくオススメしたい作品の記事をまとめるまとめ記事を今月から書いて行こうと思います。(ネタ切れじゃないよ)
そんなわけで、今回は2017年10月のオススメ作品の記事です。
【映画レビュー】アウトレイジ ビヨンド【80点】 - a picture is worth a thousand words
【アニメ】RWBY Volume1-3:The Beginning - a picture is worth a thousand words
【日本ドラマ】勇者ヨシヒコと導かれし七人 - a picture is worth a thousand words
【海外ドラマ】BLACK MIRROR シーズン1 第1話「国歌(National Anthem)」 - a picture is worth a thousand words
【映画レビュー】ブレードランナー ファイナルカット【90点】 - a picture is worth a thousand words
【映画レビュー】咲-Saki-【65点】
原作未読でもそれなりに楽しめる能力麻雀映画
・短評
地獄めぐりのつもりで鑑賞してみたら割合楽しむことが出来た
・あらすじ
麻雀がメジャーな競技として、学校でもさかんな競技として親しまれている世界。
天才的なセンスを持ち合わせる宮永咲(浜辺美波)は麻雀部の仲間と優勝を掴むため猛者が入り乱れるインターハイに挑むことになる……。
・感想
麻雀を題材にした同名漫画の実写化映画を鑑賞。
そもそも僕は原作である漫画はおろかアニメに至るまで見たことがありません。
それどころか、この映画までの道のりを描いた導入部分の実写化であるドラマ版すら鑑賞していなく「なんでこの映画観ようと思ったんだよ」と言われると何も言えない状況だったりします(別に好きな俳優が出ているわけでもない)。
原作も麻雀も知らずに観る方は俳優さんのファン以外ではあまりいないとは思いますが、この映画は「麻雀」のルール自体に対してはほとんど説明がないので知らない人は恐らくついてけません。
僕自身はかなり麻雀が好きで、雀荘などにはあまり行きませんが仲間内で麻雀をしたり、麻雀漫画や映画なども割と観ますし読みます。
そんなわけでこの映画を「怖いもの見たさ」で見始めたのですが、それなりに楽しむことが出来ました。
何回かこのブログでも紹介させていただきましたが昨年末ほどから『HiGH&LOW』シリーズハマっています。
その影響からかチームの紹介演出に大分弱く、『咲-Saki-』でもオープニングの演出だけでやや心が動いてしまいました。
とは言え、もちろんそれだけでは判断しません。
基本的にこの作品は能力バトルものの定番近い物語展開を見せる麻雀作品です。
能力を先に見せ独走しているキャラは必ず中盤で良いようにやられたり、と展開の先読みはしやすく物語展開だけで言うならば特に驚く部分のない普通なものでした。
しかし、この作品で驚いたのは『ガールズ&パンツァー 劇場版』にも言える短い時間でのキャラの描き分けが上手いと言った部分です。
作品内での団体戦のルールは剣道の団体戦と同じく、チームごとに先鋒、次鋒、中堅、副将、大将を決め定められた局数を打つと言うルールですが、それゆえに映画内だけで5人×4校の20人ものキャラが登場します。
元々が漫画なので当然なのですが、とにかくそのキャラクターたちのどれもが色が濃く、短い時間の中でスポットが当たる主人公チーム以外のチームのキャラクターたちもその独特のキャラ特性をアピールしてくるため、もっとたくさん彼女たちの活躍を観たい気持ちにさせられます。
俳優たちの演技も頑張っていて、多少の無理な演技も見受けられますが、全体を通して実写化や若手アイドル集合作に特有の痛々しさはあまり感じませんでした。
中でも個人的には風越女子高校のリーダー、福路美穂子を演じた加村真美は特に魅力的で、彼女の他の出演作にも興味がわきました。
ただドラマ版を観ていなかったから、と言う部分もあるとは思うのですが、
恐らく映画初登場である鶴賀学園であったり、風越女子高校にも映画内で全く活躍はおろか目立ちもしない空気キャラは多く『ガールズ&パンツァー 劇場版』のように全員に活躍の場を用意する難しさを感じてしまいました。
当初感じていた「痛々しい映画なんだろうなー」と言う印象を割とぬぐってくれていたこの作品。
原作ファンの目にはどう映ったのか気になりますが、僕自身は続編も少し興味がわくような作品でした。
【映画レビュー】LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標【92点】
俺はただ、美味い煙草が吸いたいだけさ
ルパン三世-次元大介の墓標 / LUPIN THE 3RD: JIGEN'S GRAVEST[Blu-ray][Import]
- 出版社/メーカー: Eastern Star
- 発売日: 2016
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログを見る
・短評
ハードボイルドと終盤の怒涛の展開が融合したルパン三世シリーズの最高傑作
・あらすじ
犯罪の発生率が極端に低い東ドロアに秘宝「リトルコメット」を求め潜入したルパン三世(声:栗田貫一)と次元大介(声:小林清志)。
無事秘宝を入手した2人だったが、想像を超える警察の動きの速さを前に逃走を余儀なくされる中、次元の命を狙う暗殺者ヤエル奥崎(声:広瀬彰勇)に突如襲撃される……。
・感想
近年のコメディタッチを中心としたルパン三世像から、より原作に近いハードボイルドかつエロティックな路線を目指す「LUPIN THE IIIRD」シリーズの第2弾。
シリーズの1作目の連続アニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』はまだ観たことがないのですが、今作の『次元大介の墓標』はとっても大好きで、今までに5回は再鑑賞をしました。
このシリーズは流血や生々しい表現も多く、続編である『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』では武器が刃物だけに人体欠損描写もあったりします。
しかし、人が死んでいることをしっかりと描写することによって近年のルパン三世の扱いである義賊のようなイメージのある「正義のヒーロー」像から原作により近い「ダークヒーロー」像としてのルパン三世をよりイメージしやすくなっています。
前後編構成でそれぞれが30分なため、上映時間はおよそ1時間ととてもあっさりとした雰囲気ですが、内容の濃密さは尋常じゃありません。
飄々とした印象ながら凄まじい知力と洞察力を持ち合わせたルパン三世と、とある女性の命を守り切れなかった事に後悔を残すガンマン次元大介のコンビとしての魅力もさることながら、
今作に登場する敵役ヤエル奥崎との攻防、東ドロアに隠された政治的陰謀、峰不二子の救出など僅か1時間にとんでもない量の伏線を敷き詰めた上で、その全てをきっちりと回収しきります。
特に今作でスポットの当たる次元大介の魅力は尋常じゃなく、名言や名台詞のオンパレードとなっています。
中でも「俺に言わせりゃ、ロマンが足りねぇな」の一連のセリフは新規作品に厳しいルパン三世のファンの間でも次元大介を代表するセリフとして支持されるほどでしたし、僕も大好きなセリフです。
ルパン三世が好きと言う方にはもちろんですが、ルパン三世をほとんど知らない人にもサスペンス作品として充分にオススメできる今作。
NETFLIXでも配信されているので是非是非ご覧になってみてください。
【映画レビュー】ポッピンQ【50点】
舞台やミュージカルのような展開と王道青春モノなのだが……
・短評
ところどころに良い演出が光るものの、展開が唐突すぎて違和感が多い
・あらすじ
部活と望まぬ引っ越しにモヤモヤを抱える中学3年生の小湊伊純(声:瀬戸麻沙美)は卒業式にも参加する気はほとんどなく、両親に反発していた。
しかし、卒業式の日、登校途中に異世界に迷い込んでしまった伊純は同じくこの世界に迷い込んでしまった同年代の少女たちと共に世界を救うために行動することになる……。
・感想
2016年に公開された東映アニメーション60周年記念オリジナル長編アニメ。
一部の熱狂的なファンからは恐ろしいほど支持されるが、それ以外の人からはやや低めの評価を受けると言うオリジナルアニメとしてはかなり異様な様相を見せている作品だったので気になって鑑賞することにしました。
結論としては、何かこう、色々と惜しいなと思える作品でした。
悩みを抱える少女たちが、ある出来事を通して成長していく作品と言えば個人的には『君の声をとどけたい』あたりが記憶に新しいです。
この映画においてもそのジャンルとしての基本展開を押さえ、異世界を救う中で成長していく物語を描いているのですが、それにしても全体的に駆け足感が凄いです。
例えば、主人公の伊純は陸上部の大会で思ったような成績を残すことが出来ず、同級生に妬みの感情を向けています。
その思いを見抜かれ、世界を救うアイテムを使えばあの大会をやり直すことが出来るよ、と甘言を受けるのですが、そのことに対してあまり悩むシーンもなく、それどころかその甘言を言ってきた人物が怪しいと分かるや否やあっさりそのこと全員に話します。
そんな風に僕には見えたにも関わらず、主人公は仲間にその出来事を話さなかったことを糾弾され、揉め事のきっかけになってしまいます。
と、本来ならもう少し葛藤のシーンを描写したり、その出来事を秘密にしているようなシーンを描くべき部分が欠けているため、どうしても展開に登場人物が振り回されているようにしか思えず違和感を覚えました。
他のキャラに関しても悩みを解消する部分は描写不足で「あっさり立ち直るるなこの子達」と心の中で思わずツッコミを入れてしまうほどでした。
しかし、主人公が最終的なコスチュームに変身してからの能力描写であったり、伊純の疾走シーンであったりはそれなりに熱くなり、感情が揺るがされる部分もあったため、尺がもう少し長ければなあ……と惜しく感じてしまう作品でした。