a picture is worth a thousand words

その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

【映画レビュー】夜明け告げるルーのうた【75点】

地上波で流して欲しい安定したヒューマンドラマ 

・短評

出会い、成長、旅立ちを丁寧に描く王道異種交流映画

 

・あらすじ

両親の離婚と勉強の強要、好きな音楽に打ち込めない様々な理由から鬱屈した毎日を過ごすカイ(声:下田翔大)は同級生の遊歩(声:寿美菜子)に誘われバンドを始める。

最初は乗り気でなかったカイだが、演奏中に人魚が現れたことでバンドを本格的に始めることになり……。

 

・感想

クレヨンしんちゃんの映画に複数たずさわり、今年は今作以外にも『夜は短し歩けよ乙女』も劇場公開されるほど話題の監督、湯浅政明監督の長編アニメーション作品。

 

劇場公開前は誰もが思ったかもしれませんが、これ『崖の上のポニョ』じゃん!と言う思いから劇場には足を運びませんでした。

しかし、TwitterなどのSNS上では絶賛の意見が多く劇場公開が終わった後に観たい気持ちが強くなっていき、ついにレンタルが開始されたので鑑賞することにしました。

 

内容としては至極真っ当な異種交流映画でした。

 

人魚伝説が伝えられ人によっては恐れ、人によっては興味を持ち、人によっては怒りを抱く複雑な田舎町で人魚と出会う人々。

主人公の出会いと成長も王道ながら、人魚をめぐり災いの元として処刑しようとする流れも割とよくある流れな気がしました。

 

ですが、今作の魅力は王道展開を彩る音楽です。

 

楽しげな音楽に重ね、等身大の青少年たちが歌う曲や僕の大好きなYUIの曲が流れたりと音楽映画としての魅力も深く、

基本的に音楽映画に甘い採点をつけがちな僕はこの部分に深く感動しました。

 

それぞれの結末は人によって賛否あるものの、人魚を憎悪するものも主人公たちもそれぞれの過去にしっかりとした答えが出るので「なんだよ、色々な部分が曖昧じゃん」と言うこともなく全体的に安心して観れる部分が大きいのも良い部分でした。

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個人的に高い憧れる少女であり、物語の火付け役とも言える遊歩のキャラがとても好きで、

主人公のカイ以上に挫折と改心がしっかりと描かれていて、彼女がこの騒動を通して何を選択したのか、にも注目して欲しいです。

 

全年齢向けアニメ映画はジブリアニメ一強と言われた世代もありましたが、

ここ数年はとにかくクオリティの高いアニメ映画が多く、今作も誰にでもオススメ出来る全年齢向けアニメ映画として自信を持ってオススメ出来る作品です。

【映画レビュー】キング・アーサー【55点】

僕の知らないアーサー王伝説 

・短評

物語はアーサー王を軸に据える必要性を感じないが、ゲーム的な終盤の戦闘描写は一見の価値がある

 

・あらすじ

モルドレッド(ロブ・ナイトン)の反乱を鎮圧し魔術師を追放したイングランド王ユーサー(エリック・バナ)は弟のヴォーティガン(ジュード・ロウ)の反逆により命を落とした。
しかし、小舟で逃がした自身の子アーサー(チャーリー・ハナム)は売春宿の娼婦に拾われ、たくましく育つがヴォーティガンは彼を危険視し……。

 

・感想

後に様々な事情から改題されることになった邦題『キング・アーサー/聖剣無双』が色々な意味で話題となった本作。
「邦題センス無さすぎw」と炎上騒動になり改題されたにも関わらず公開後に鑑賞した人たちが「これは確かに聖剣無双だったわ」と納得してしまったエピソードに興味を持ち鑑賞しました。

 

僕はアーサー王伝説についてそこまで詳しくありません。
小学校時代に「読んだ小説の絵を描く」と言う授業で読んだのが最初で最後であり、後は映画とかでの知識しかなくそれ以上吸収する気も特にありませんした。

ですが、それにしてもアーサー王伝説をもとにしながら今作はやりたい放題にやりすぎています。


家臣の保護により身分を知らずに育った → スラム街の売春宿で過ごした
と言う段階で「おっしゃ、とことんアーサー王の出自を貶めてやろーぜ」感がプンプンしますし、物語が始まった段階でおっさんなのもそこそこ違和感がありました。

 

音楽の使い方も個人的にあまり魅力的に感じず、今作をよりダイジェスト感満載にしてしまった要素に思えてしまいました。
ドンドンドンドドンドドーンみたいな太鼓の音が延々と裏でなる中、物語がとんでもないスピードで進むのでアーサー王伝説を知らない人はアーサー王伝説が何だったのかはほとんど分からないと思います。

 

あ、1つ分かることがありましたね、「エクスカリバーすげえ」ってことです。

 

でも、実はこれこそが今作の異質さを表している部分で、エクスカリバーを使った終盤戦がとにかく他で類をみないようなアクションでした。
登場人物の周りをグルグルと視点が回る「バレットタイム」と早回し、CGを全て駆使し、まるで洋ゲーをそのまま実写化したような面白みのある戦闘が繰り広げられ、
次々と敵をなぎ倒していくアーサーの姿に「これは聖剣無双だわ……」と思わず唸ってしまいます。

 

演技に関しては敵役であるヴォーティガンを演じたジュード・ロウの独り舞台とすら言えるもので、愛する者を殺すことで力を得る悲しみを流石の演技力で演じ切っていました。
ですが、急に終盤モンスターとなりゲーム的戦闘が始まるあたり『キング・オブ・エジプト』と似た空気を感じました。

 

何というか、アーサー王伝説として見なければ、トンでも映画として楽しめたような気がする映画で、終盤の戦闘シーンだけでも一見の価値があります。

【映画レビュー】007 ムーンレイカー【65点】

007 宇宙へ

・短評

今もなお超えられることのない、シリーズ随一のスケールの壮大さ

 

・あらすじ

米国のスペースシャトルムーンレイカー」が英国への輸送中に何者かに盗まれた。
手口の巧妙さから見えない勢力が暗躍していると確信した英国政府はボンド(ロジャー・ムーア)を派遣する……。

 

・感想

007シリーズ11作目。当時『スター・ウォーズ』の影響で空前のSF映画ブームの中撮影された異色の007映画です。

 

2000年代中盤ほどからリアリティ性の高い作品が好まれる風潮が映画業界では強く、007シリーズもその波に乗るためダニエル・クレイグが6代目ボンドに就任した『007 カジノロワイヤル』では荒唐無稽な要素は姿を潜め、リアリティ路線で絶大な評価を得ました。
その後もその路線は続き『007 慰めの報酬』『007 スカイフォール』と話が重く目立った秘密兵器(新Q曰く時代遅れ)も登場しない作品が続きました。

 

もちろん僕はダニエル・クレイグの007も大好きです。


カジノロワイヤルを始めた鑑賞した時には序盤のパルクールの連発と最後のセリフに鳥肌が立ちましたし、スカイフォールもその構成の隙の無さは何度観ても驚嘆の限りです。

 

でも、違うんです。僕が007に見せて欲しいのは敵の大規模な計画と、それを潰す007の大活躍なのです。
スペクターはまあまあ巨大組織感あったけどまだショボいし、何だよ水の利権とか見捨てられた復讐って……もっと規模の大きい007を見せてくれよ!とそんな思いで過去作を復習していたのですが、やはり今作はずば抜けて頭のおかしい作品でした。
何せ、敵の行おうとしてることは全人類の抹殺計画ですし『キングスマン』は明らかに今作を参考にしています(キングスマン劇中でも多少仄めかすセリフが登場します)。

 

まず、前作である『007 私を愛したスパイ』から登場する名敵役ジョーズの初っ端からの登場にまず燃えます。
シリーズを通しても唯一と言える(もう一人呪術師みたいのがいた気もする)何をされても死なない上に作品を跨いで登場する珍しいタイプの敵役として人気のキャラですが、今作では第2の主人公と言えるほど意外な展開を迎えます。
この理不尽かつ唐突な登場には『ワイルドスピード SKY MISSION』のジェイソン・ステイサムを思い浮かべますが、とにかく今作でもジョーズがしょっちゅう登場するため楽しいです。

 

しかし、物語は荒唐無稽かつ雑です。
ボンドはどこにいっても脈絡なく敵に捕捉されてますし、終盤の宇宙戦争を彩る英国部隊はノープランで突っ込んできますし、何か良く分からない日本人は剣道スタイルの竹刀で襲ってきます、せめて木刀使って……とツッコミたくなるのですが、

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まあ、何せボンドが宇宙行っちゃいますし、宇宙でいつも通り女の人と無重力で情事にふけってしまいますし、もうツッコむのも野暮なレベルになっています。

 

007の敵の秘密基地には毎回池みたいなのあるし、そこにはたいがい何かヤバい生き物飼ってるし、大体その池に落とす装置あるよなー、なんて何かオヤツを食べながら観るのに適した映画だと思います。


僕が見たかった大規模な計画の007ではあったのですが、十数年ぶりに鑑賞してみるととんでもない作品でした。

【映画レビュー】IT “それ”が見えたら、終わり。【75点】

仲間のため恐怖に立ち向かう、子供たちの成長の物語

Ost: It

Ost: It

 
・短評

怖さに関しては割とマイルドなので、ホラーより物語を主軸に映画を観たい人にオススメ

 

・あらすじ

子供を中心に異常な数の行方不明者が出る街に住むビル(ジェイデン・リーバハー)は突如弟が姿を消して以降、学友たちとその行方を探し続けていた。

一方、親からの異常な愛情や学友たちからのいじめを受けるベバリー(ソフィア・リリス)は学校内で流れる自身に対する悪質な噂を意に介さないビルたちと行動を共にするようになり……。

 

・感想

1986年に刊行されたスティーヴン・キングによる小説『IT』を2度目の映像化作品。

 

スティーヴン・キングと言えば『キャリー』『シャイニング』『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』など映像化され、大ヒットとなった作品が山のようにあるレジェンド作家の1人です。

来年には彼の著書シリーズである『ダークタワー』が実写化されるなど、映画界では常にスティーヴン・キングフィーバーが起きています。

 

そんな彼が今回の実写化に対し大絶賛をした、と話題となっていたので今作に興味はあったのですが、実はかなりのビビりである自分はBlu-rayが出るまでいいやと鑑賞を避けていたのです。

それもそのはず、僕は「怖い」は大丈夫なのですが「ビックリ」がとにかくダメで、今作は公開当初から「音や視覚でビックリさせる演出の多いお化け屋敷みたいな作品」とのレビューもチラホラ見かけていたため完全にスルーを決めていました。

 

しかし、職場の後輩や映画好きの方々の「見ないのはおかしい」と言う圧力に屈し、先日映画館に足を運ぶことになりました。

 

当日はあまりのビビりぶりに、いつでも脱出できるように出口に近い末端の座席を確保していたレベルの僕でしたが、ふたを開けてみるとビックリ、そこまで怖い映画ではありませんでした。

 

もちろん「ハードルを上げすぎていたためにあまり怖く感じなかった」だけで、随所随所に怖い部分はあるのですが、

意外と良く喋るペニーワイス(ピエロ)、合間合間に気の抜けるようなセリフを吐く面白少年、子供たちに袋叩きにされる恐怖の対象であるペニーワイス(ピエロ)など、面白おかしい部分も多く、

音でビビらせる演出も緊張感の煽りにはよく使われますが、実際に突然出てくるシーン自体は数えるほどしかなく、苦手な僕でも充分に耐えれるものでした。

 

逆に言えばその辺りの要素は、ホラー映画が好きな人にはマイナス点ではあると思います。

ですが、「理不尽」に「脈拍なく」ペニーワイスに襲われる恐怖感は場面を跨ぐほど蓄積され、1人になることへの恐怖は充分に味わえると思います。

 

そして、この映画は「ホラー版『スタンド・バイ・ミー』」と言われるのも頷けるほどの成長物語で、

「負け犬」と呼ばれる主人公たちが、出会いや葛藤を通して仲間や家族のために恐怖の対象であるペニーワイスに立ち向かうことを決めていきます。

 

ただのホラー映画では感じえない、子供の時分の冒険譚を感じることの出来る作品で、「夏」や「想い出」と言うワードに心惹かれる人には、例えホラーが苦手でも映画館に足を運んで欲しく感じました。

【映画レビュー】ラストスタンド【78点】

辺鄙な田舎町、そこが最後の砦となった

ラストスタンド Blu-ray
 
・短評

シンプルなストーリーと緻密な作戦、アクションはやや物足りないが間違いなくシュワちゃん映画

 

・あらすじ

メキシコとの国境付近にある田舎町ソマートンで保安官を勤めるレイ(アーノルド・シュワルツェネッガー)のもとに殺人事件の知らせが入る。
一方、FBIでは移送中に逃走した麻薬王ガブリエル(エドゥアルド・ノリエガ)をメキシコへと渡らせないために必死の追走を行っていた……。

 

・感想

アーノルド・シュワルツェネッガー州知事を引退以降、本格的に俳優業に復帰した作品。
2013年に公開され映画館に足を運んだ映画ですが、今回で4度目の鑑賞になりましたがやはり好きなタイプの作品でした。

 

初回鑑賞時は「肝心のシュワルツェネッガーのアクションが少ない」と不満にも感じたのですが、再度鑑賞するとこの映画のテンポの良さに驚きます。

 

登場人物の軽い紹介、麻薬王ガブリエルの逃走、田舎町での殺人事件、FBIの麻薬王の追跡、と話は停滞することなく進み辺鄙な田舎町での殺人事件とFBIの逃走劇が1つに重なる秀逸な展開を見せます。
自身に絶対の自信を持っているガブリエルのそれを裏付ける凄みと凶悪さ、田舎町を守る保安官レイの正義感と抜け目のなさも丁寧に描かれ、終盤で2人が相まみえるシーンは初対面にも関わらずとても熱くなります。

 

脇役にも魅力的な登場人物が多く、事件の起きない田舎町に辟易する若手保安官、テンガロンハットを被るおじさん保安官、文武両道を兼ね備えた才人だったが酒と暴力に溺れた若者、町と秩序を守るため命をかける女性保安官、銃器を集めることが趣味のお笑い担当など多種多様な人物が銃を取り戦う後半は、もはや現代版『マグニフィセント・セブン』とも言えます。

 

そして、もちろん我らがシュワルツェネッガーも大活躍。


復帰作だからかアクションの量はやや控えめではあるのですが、麻薬王に立ちふさがる最後の砦としての重圧感は尋常ではなく、緻密な計画をたてた麻薬王が敵役にも関わらず可哀想にすら感じます。

 

シュワルツェネッガー映画にありがちな、物語はどうでも良いからとにかく派手な映画にしよう!と言うはっちゃけぶりは少なく、むしろ以前に紹介した『大脱出』と同様に物語展開にもかなり尽力したことがうかがえる映画ですので、
雑なシナリオが嫌いな物語重視で映画を選んでいる人にもオススメできる、入門シュワちゃん映画です。

【映画レビュー】リアル鬼ごっこ【60点】

なかなか豪華なメンツが出そろう異色アクションSF 

リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ

 
・短評

設定矛盾は目立つもののパルクールを取り入れたアクションが当時の邦画として異質

 

・あらすじ

全国で佐藤姓の人間が不審死する事件が相次いでいた。
不良の佐藤翼(石田卓也)は幼馴染でありヤクザの小間使いである佐藤洋大東俊介)との抗争中に異世界に飛ばされてしまう。
そこでは、同じような日本で佐藤姓の人のみが命を狙われる「リアル鬼ごっこ」が開催されていて……。

 

・感想

2001年に自費出版として刊行され、「鬼ごっこを題材にしたデスゲーム」と言う設定が10代を中心に話題となり莫大な売れ行きを記録した山田悠介の同名小説を2008年に実写化した作品。
とは言え、今作以降の実写化はドラマ版を除くと「鬼ごっこを題材にしたデスゲーム」部分以外はほとんどオリジナルとなっています。

 

高校生くらいの時分で映画館に観に行った当初は「B級映画w」と内心ちょっとバカにしていたのですが、いま改めて鑑賞すると異質な要素が色々と目につきます。

 

佐藤翼の元いた世界とリアル鬼ごっこが開催される世界にはそれぞれ同じ人間がいて、そのどちらか片方でその人が死亡するともう片方の世界でも何らかの理由で死亡すると言う設定を基準に物語が進んでいきます。
昔はふーんとしか思わなかったこの設定ですが、再鑑賞してみるとなかなかに優秀な設定です。
パラレルワールドと言うかなり説明が難しい内容を簡単に説明出来ていますし、佐藤翼がパラレルワールドで奮闘しなければいけない理由もしっかりと用意出来ていてオリジナル展開の中でもかなり秀逸な設定に感じました。

 

アクション面としては主人公の佐藤翼のアクションにはフリーランニングことパルクールが使われています。
バランスやスピードを重視するパルクールは戦闘よりも移動の手段にこそ向いているものであり、鬼ごっこと言う分野にはこれ以上ないほどに映えます。
しかも、『SP』や『HiGH&LOW』でようやく邦画にも取り入れ始められて来た、と感じたパルクールが今よりも10年ほど前に採用されていることに驚きを隠せませんでした。

 

石田卓也谷村美月大東俊介吹越満柄本明と今観ると俳優陣もとても豪華で最初に観た時と感想が180度変わるようなものでしたが、やはりパラレルワールドと言う設定の難しさからツッコミどころはかなり多いです。


主人公の性格も直情的なバカと言う感じで魅力を多くは感じませんし、細部の設定やキャラの練りこみは荒削りと感じました。

 

しかし、ざっくりと観るにはなかなかの作品で光るものを感じる作品だったのは確かでした。