a picture is worth a thousand words

その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

【映画レビュー】無限の住人【45点】

原作未読者にはあまり向かないダイジェスト感溢れる展開 

・短評

意欲的であることは間違いないが、第二の『るろうに剣心』にはなれなかったと言う印象

 

・あらすじ

八百比丘尼山本陽子)と名乗る老婆に血仙蟲と言う虫を体内に宿され不死身となった男、万次(木村拓哉)。
惨殺された両親の仇を討つことを悲願とする少女、浅野凜(杉咲花)の懇願により万次は修羅の戦いへと身を投じることになる……。

 

・感想

沙村広明による同名漫画を木村拓哉主演で映画化した作品。


日本での興行収入は振るわなかったものの、海外の批評家たちから好意的な評価を受けていること興味を持ち、原作未読ですが鑑賞してみましたが、僕としてはこの映画はイマイチに感じてしまいました。

 

原作は30巻にも及ぶ長作になっているとのことですが、噂によるとこの作品まさかの1巻から30巻までを描くと言う140分ほどの上映時間でかなり無理をしています。
凄まじい腕を持ち、まがまがしい形相や深い過去を持ち登場する敵キャラが数分であっさりやられていく展開の連続や、万次と凛の関係性の描写も薄さなど全体を通して物語をダイジェストで描いただけにしか思えませんでした。

 

殺陣にも少し不満があり、各自の動きを特徴的にして集団戦でも見やすくしている殺陣であるとは思うのですが実写版『るろうに剣心』の殺陣の格好良さには及んでいません。
リアル路線の殺陣を貫くなら、行き過ぎたスピード感はリアリティを欠如させる要因となってしまいますが今作は完全なファンタジー路線。この路線での殺陣は『るろうに剣心』と言う成功例があるため、今作は少しイマイチに感じてしまいました。


主人公の万次の強さも描き切れておらず、1人で100人を倒したと言う経歴が活きていないように感じ、基本的に全員不死身で死なないことを使った奇襲以外で勝っているシーンが見られず「実のところ腕は大したことないんじゃ……」との疑念が最後まで晴れませんでした。

 

全体を通して説明不足かつ殺陣もイマイチ、と僕は感じたのですが原作のファンにはそれなりに受けが良く、楽しかったと言う意見を聞く作品でもあるので原作も読んでみたいと思います。

【映画レビュー】メン・イン・ブラック【75点】

テンポが良く何回観ても楽しめる定番娯楽SF

・短評

コメディ満載の展開に混ざる丁度いい量のシリアスで飽きない100分

 

・あらすじ

NYPDの刑事ジェームズ(ウィル・スミス)はある事件の容疑者を追跡中に常人離れした身体能力と不可思議な兵器を目にしてしまう。
容疑者の自殺と隠すことなくすべてを報告したジェームズは逆に仲間に疑われることになってしまうが、事件に興味を持った謎の男K(トミー・リー・ジョーンズ)が取調室に現れ……。

 

・感想

1997年に公開され、莫大な興行収入を記録したウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのW主演作品。


シリーズは3作作られ、地上波でも幾度となく放映されたため日本でも知名度の高い人気シリーズでもあります。

メン・イン・ブラック』は「UFO(未確認飛行物体)や未知の物体が確認されたところに黒スーツの男たちが現れる」と言うアメリカの都市伝説の名称であり、ある意味では都市伝説の実写版と言うB級色の強いプロットなのですが、驚くほど面白い作品に仕上がっています。


僕も子供の頃から何回も鑑賞している作品なのですが、改めて鑑賞してみてこの映画の面白さがどこにあるのかを再確認しました。

 

トミー・リー・ジョーンズ演じる堅物で厳しい人物ながら、身体を張り仲間を信じるKはシリーズを通してもファンが多く、役者の年齢のためか老年Kの登場シーンが多くない3作目でガッカリしたと言う意見も聞くほどです。


しかし、やはりこの映画を大ヒットに仕立て上げたのはウィル・スミスの力が多かったように思えます。

 

地球に降り立ったエイリアン、バグ。人を容赦なく殺す人の皮を被ったバグの行動は恐ろしく、その不気味な動きも交え子供の頃に鑑賞した際は軽くトラウマになるレベルでした。
ですが、ウィル・スミス演じるジェームズの物怖じしない陽気な性格がウィル・スミスの演技にマッチしていて新人構成員の彼がジョークと得意の口先で笑わせてくれるため怖いシーンも乗り切れます(逆に全体がコメディタッチなのでバグのシーンは怖いのですが)。
映画全体として考えるならば、彼の「ウザくならない程度に陽気で面白い」と言う要素こそがこの映画の最大の魅力だったのではと思いました。

 

そして1997年公開映画でありながら、CGもかなり秀逸。
映画を観ている最中に「あ、これもろ合成じゃん」と言うような現実へ引き戻される映像技術の稚拙さは当時の映画にしてはあまり感じず全体的に違和感を覚えることはありませんでした。

 

正直1作目は何度も何度も観ているため、再鑑賞してもざーっと観るだけかなーなんて思っていたのですが実際に鑑賞してみると面白く、飽きることのない100分間でした。

【映画レビュー】夜明け告げるルーのうた【75点】

地上波で流して欲しい安定したヒューマンドラマ 

・短評

出会い、成長、旅立ちを丁寧に描く王道異種交流映画

 

・あらすじ

両親の離婚と勉強の強要、好きな音楽に打ち込めない様々な理由から鬱屈した毎日を過ごすカイ(声:下田翔大)は同級生の遊歩(声:寿美菜子)に誘われバンドを始める。

最初は乗り気でなかったカイだが、演奏中に人魚が現れたことでバンドを本格的に始めることになり……。

 

・感想

クレヨンしんちゃんの映画に複数たずさわり、今年は今作以外にも『夜は短し歩けよ乙女』も劇場公開されるほど話題の監督、湯浅政明監督の長編アニメーション作品。

 

劇場公開前は誰もが思ったかもしれませんが、これ『崖の上のポニョ』じゃん!と言う思いから劇場には足を運びませんでした。

しかし、TwitterなどのSNS上では絶賛の意見が多く劇場公開が終わった後に観たい気持ちが強くなっていき、ついにレンタルが開始されたので鑑賞することにしました。

 

内容としては至極真っ当な異種交流映画でした。

 

人魚伝説が伝えられ人によっては恐れ、人によっては興味を持ち、人によっては怒りを抱く複雑な田舎町で人魚と出会う人々。

主人公の出会いと成長も王道ながら、人魚をめぐり災いの元として処刑しようとする流れも割とよくある流れな気がしました。

 

ですが、今作の魅力は王道展開を彩る音楽です。

 

楽しげな音楽に重ね、等身大の青少年たちが歌う曲や僕の大好きなYUIの曲が流れたりと音楽映画としての魅力も深く、

基本的に音楽映画に甘い採点をつけがちな僕はこの部分に深く感動しました。

 

それぞれの結末は人によって賛否あるものの、人魚を憎悪するものも主人公たちもそれぞれの過去にしっかりとした答えが出るので「なんだよ、色々な部分が曖昧じゃん」と言うこともなく全体的に安心して観れる部分が大きいのも良い部分でした。

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個人的に高い憧れる少女であり、物語の火付け役とも言える遊歩のキャラがとても好きで、

主人公のカイ以上に挫折と改心がしっかりと描かれていて、彼女がこの騒動を通して何を選択したのか、にも注目して欲しいです。

 

全年齢向けアニメ映画はジブリアニメ一強と言われた世代もありましたが、

ここ数年はとにかくクオリティの高いアニメ映画が多く、今作も誰にでもオススメ出来る全年齢向けアニメ映画として自信を持ってオススメ出来る作品です。

【映画レビュー】キング・アーサー【55点】

僕の知らないアーサー王伝説 

・短評

物語はアーサー王を軸に据える必要性を感じないが、ゲーム的な終盤の戦闘描写は一見の価値がある

 

・あらすじ

モルドレッド(ロブ・ナイトン)の反乱を鎮圧し魔術師を追放したイングランド王ユーサー(エリック・バナ)は弟のヴォーティガン(ジュード・ロウ)の反逆により命を落とした。
しかし、小舟で逃がした自身の子アーサー(チャーリー・ハナム)は売春宿の娼婦に拾われ、たくましく育つがヴォーティガンは彼を危険視し……。

 

・感想

後に様々な事情から改題されることになった邦題『キング・アーサー/聖剣無双』が色々な意味で話題となった本作。
「邦題センス無さすぎw」と炎上騒動になり改題されたにも関わらず公開後に鑑賞した人たちが「これは確かに聖剣無双だったわ」と納得してしまったエピソードに興味を持ち鑑賞しました。

 

僕はアーサー王伝説についてそこまで詳しくありません。
小学校時代に「読んだ小説の絵を描く」と言う授業で読んだのが最初で最後であり、後は映画とかでの知識しかなくそれ以上吸収する気も特にありませんした。

ですが、それにしてもアーサー王伝説をもとにしながら今作はやりたい放題にやりすぎています。


家臣の保護により身分を知らずに育った → スラム街の売春宿で過ごした
と言う段階で「おっしゃ、とことんアーサー王の出自を貶めてやろーぜ」感がプンプンしますし、物語が始まった段階でおっさんなのもそこそこ違和感がありました。

 

音楽の使い方も個人的にあまり魅力的に感じず、今作をよりダイジェスト感満載にしてしまった要素に思えてしまいました。
ドンドンドンドドンドドーンみたいな太鼓の音が延々と裏でなる中、物語がとんでもないスピードで進むのでアーサー王伝説を知らない人はアーサー王伝説が何だったのかはほとんど分からないと思います。

 

あ、1つ分かることがありましたね、「エクスカリバーすげえ」ってことです。

 

でも、実はこれこそが今作の異質さを表している部分で、エクスカリバーを使った終盤戦がとにかく他で類をみないようなアクションでした。
登場人物の周りをグルグルと視点が回る「バレットタイム」と早回し、CGを全て駆使し、まるで洋ゲーをそのまま実写化したような面白みのある戦闘が繰り広げられ、
次々と敵をなぎ倒していくアーサーの姿に「これは聖剣無双だわ……」と思わず唸ってしまいます。

 

演技に関しては敵役であるヴォーティガンを演じたジュード・ロウの独り舞台とすら言えるもので、愛する者を殺すことで力を得る悲しみを流石の演技力で演じ切っていました。
ですが、急に終盤モンスターとなりゲーム的戦闘が始まるあたり『キング・オブ・エジプト』と似た空気を感じました。

 

何というか、アーサー王伝説として見なければ、トンでも映画として楽しめたような気がする映画で、終盤の戦闘シーンだけでも一見の価値があります。

【映画レビュー】007 ムーンレイカー【65点】

007 宇宙へ

・短評

今もなお超えられることのない、シリーズ随一のスケールの壮大さ

 

・あらすじ

米国のスペースシャトルムーンレイカー」が英国への輸送中に何者かに盗まれた。
手口の巧妙さから見えない勢力が暗躍していると確信した英国政府はボンド(ロジャー・ムーア)を派遣する……。

 

・感想

007シリーズ11作目。当時『スター・ウォーズ』の影響で空前のSF映画ブームの中撮影された異色の007映画です。

 

2000年代中盤ほどからリアリティ性の高い作品が好まれる風潮が映画業界では強く、007シリーズもその波に乗るためダニエル・クレイグが6代目ボンドに就任した『007 カジノロワイヤル』では荒唐無稽な要素は姿を潜め、リアリティ路線で絶大な評価を得ました。
その後もその路線は続き『007 慰めの報酬』『007 スカイフォール』と話が重く目立った秘密兵器(新Q曰く時代遅れ)も登場しない作品が続きました。

 

もちろん僕はダニエル・クレイグの007も大好きです。


カジノロワイヤルを始めた鑑賞した時には序盤のパルクールの連発と最後のセリフに鳥肌が立ちましたし、スカイフォールもその構成の隙の無さは何度観ても驚嘆の限りです。

 

でも、違うんです。僕が007に見せて欲しいのは敵の大規模な計画と、それを潰す007の大活躍なのです。
スペクターはまあまあ巨大組織感あったけどまだショボいし、何だよ水の利権とか見捨てられた復讐って……もっと規模の大きい007を見せてくれよ!とそんな思いで過去作を復習していたのですが、やはり今作はずば抜けて頭のおかしい作品でした。
何せ、敵の行おうとしてることは全人類の抹殺計画ですし『キングスマン』は明らかに今作を参考にしています(キングスマン劇中でも多少仄めかすセリフが登場します)。

 

まず、前作である『007 私を愛したスパイ』から登場する名敵役ジョーズの初っ端からの登場にまず燃えます。
シリーズを通しても唯一と言える(もう一人呪術師みたいのがいた気もする)何をされても死なない上に作品を跨いで登場する珍しいタイプの敵役として人気のキャラですが、今作では第2の主人公と言えるほど意外な展開を迎えます。
この理不尽かつ唐突な登場には『ワイルドスピード SKY MISSION』のジェイソン・ステイサムを思い浮かべますが、とにかく今作でもジョーズがしょっちゅう登場するため楽しいです。

 

しかし、物語は荒唐無稽かつ雑です。
ボンドはどこにいっても脈絡なく敵に捕捉されてますし、終盤の宇宙戦争を彩る英国部隊はノープランで突っ込んできますし、何か良く分からない日本人は剣道スタイルの竹刀で襲ってきます、せめて木刀使って……とツッコミたくなるのですが、

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まあ、何せボンドが宇宙行っちゃいますし、宇宙でいつも通り女の人と無重力で情事にふけってしまいますし、もうツッコむのも野暮なレベルになっています。

 

007の敵の秘密基地には毎回池みたいなのあるし、そこにはたいがい何かヤバい生き物飼ってるし、大体その池に落とす装置あるよなー、なんて何かオヤツを食べながら観るのに適した映画だと思います。


僕が見たかった大規模な計画の007ではあったのですが、十数年ぶりに鑑賞してみるととんでもない作品でした。