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その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

最終作への期待を込めて…綾辻行人「館」シリーズ9作品紹介

もう完全に書きたい事だけを書くブログとなりましたが、

考えてみれば実写ドラマ版「すべてがFになる」作成決定時に叩きたいがために作ったブログなのであんまり初期と大差ないんです。

 

 という訳で今回は大好きな小説シリーズである「館」シリーズの既刊作品を全作紹介していこうと思います。

火村英生シリーズ全作品紹介の後編を書けだって?ドラマ化に乗ったみたいで書きにくいわ!

 

「館」シリーズとは

館シリーズ(やかたシリーズ)は、綾辻行人による長編推理小説のシリーズ。2012年2月時点でシリーズ累計409万部を突破している。寺の三男坊(後に推理作家)の素人探偵・島田潔が、今は亡き建築家・中村青司が建築に関わった奇怪な建物に魅せられ、訪ねていく。すると、そこでは決まって凄惨な殺人事件が起こる。*1 

って事みたいですよ。

色々書いた結果Wikipediaの方が分かりやすくなりましたので転載しちゃいました。もうコピペだけでブログ出来るんじゃないかな。

でも、ここからはあくまでも自身の感想で書いていきます。

1:十角館の殺人
十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

あらすじ---

推理小説研究会のメンバーたちは半年前、奇怪な殺人事件の起きた孤島である角島で1週間を過ごすため角島を訪れた。半年前の事件で死亡した中村青司という建築家の建てた建築物『十角館』を舞台に推参な連続殺人事件が起きるとも知らずに。

一方、本土では元推理小説研究会の江南に怪文書が送られていた。嫌な予感を察知した江南はすぐに調査を開始するが……。

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始動の作品にして綾辻行人の処女作。

アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』をベースに様々な推理小説のオマージュを取り入れていて、作者の推理小説好きが伝わってくる作品ですが、

何よりも思わず「あっ」と言ってしまうラスト付近の一言は作品そのものよりそのワンフレーズの方が有名かもしれません。ネタバレ厨も湧きやすいよ。

中村青司という建築家の猟奇性、そして綾辻行人の土台になるとも言える鮮やかかつ豪胆な叙述トリック。とにかく推理小説好きなら読んでおいて損はない作品です。 

2:水車館の殺人
水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

あらすじ---

島田潔が訪れた『水車館』。中村青司が建築し、仮面をつけた館主が住むこの館では1年前、絵画と島田の旧友が失踪した。全ての起きたあの日から止まっていた時間が、島田の来訪によって再び動き出し……。

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「素人探偵、島田潔による中村青司の建築物の探訪」というシリーズの方向性を決定づけた2作目。

前作ではイチ登場人物に過ぎなかった島田潔の魅力がどんどんと引き出される事になる今作ですが、推理小説としてかなり一般的でありふれた内容で謎解きへの魅力は薄いです。

しかし、今作以降もシリーズに散見されるようになるその作品ごとの独特の雰囲気。『水車館の殺人』では文体から感じられる幻想的な雰囲気は『水車館』の持つ神秘性が感じられ、「館」シリーズにどっぷり浸からせられます。

3:迷路館の殺人
迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

 

あらすじ---

島田の元に新人作家の鹿谷門実によるデビュー作『迷路館の殺人』が届く。それは鹿谷門実が中村青司の建築した『迷路館』で巻き込まれた殺人事件を基にした推理小説だった。

作家界の巨匠、宮垣葉太郎の還暦パーティーに集まった宮垣由来の作家や評論家たち。宮垣の自殺を起点に中村青司の建築したこの『迷路館』で自身の作品を見立てに使った連続殺人が繰り広げられる……。

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縦横無尽に張り巡らされた迷路の館の中で起きる連続殺人。作中に仕掛けられた大きな仕掛けが話題となりがちな本作。

確かに、綾辻行人らしいメインの仕掛けも鮮やかで「首切りの論理」からの推理にも惹かれます。

しかし、神話であるミノタウロスの迷宮をなぞった迷路からの脱出劇など、盛り上がりも多くありシリーズいち何度も読み返したくなる作品だと個人的には思っています。

4:人形館の殺人
人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

あらすじ---

体の一部のパーツが欠けた人形が随所に設置された『緑影荘』に移り住むことになった画家の飛龍想一。

だが、移り住んでから想一の周りで通り魔殺人や想一に対する脅迫が度々発生。徐々に危険を感じ始めた想一は大学時代の友人島田潔に助けを求める……。

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じわじわと忍び寄る恐怖が書かれ、推理小説よりホラー小説に近い展開が印象に残る『人形館の殺人』。

水車館の殺人』同様、推理小説としては非常にありがちでイマイチ、、、とも感じてしまいましたが三津田信三を思わせるべったりと張り付くような恐怖感は一人作業が多い方にはオススメしたくなくなるほどです。

知っている方も多いとは思いますが、シリーズのメインとなる登場人物「島田潔」の名前の由来は推理小説界の巨匠、島田荘司と彼の著作シリーズである御手洗潔シリーズの主人公「御手洗潔」を掛け合わせたもの。

そんな御手洗潔シリーズの代表的作品『占星術殺人事件』のネタも含まれているので島田荘司ファンの方にもオススメしたい作品です。

因みに玉木宏主演で実写化された御手洗潔シリーズの最新作『星籠の海』が今年映画化されるそうですね。悪のアベンジャーズこと玉木宏の演技に注目したいです。

偏見に満ちた好きな男性俳優紹介 - a picture is worth a thousand words

5:時計館の殺人

あらすじ---

108個の時計が飾られる中村青司が建築した『時計館』。オカルト雑誌の取材チームと大学生の超常現象研究会のメンバーたちは館の中で3日間閉じ籠もる企画のため『時計館』を訪れた。ここでおぞましい連続殺人が起きることも知らずに。

一方、取材チームの中の江南から企画の情報を聞いていた鹿谷門実も中村青司の館に惹かれ『時計館』を訪れる……。

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第45回日本推理作家協会賞を受賞したシリーズ5作目。

この作品、実は以前にも当ブログで紹介したのですがとにかく大、大、大好きな作品です。

あらゆる部分に張られた全ての伏線が殺人の謎、そして『時計館』そのものの謎に集結する推理小説としての完成度の高さと、『時間』に対する想いと願いが招く美しくも儚い最後があ~~、とにかく読め!読んでください!

6:黒猫館の殺人

あらすじ---

作家の鹿谷門実の元に記憶を無くした老人、鮎田冬馬が現れ失ってしまった過去の記憶の復元を依頼する。

鮎田が手がかりとして残した手記には彼が中村青司によって建てられた『黒猫館』で昨年に巻き込まれる事になった殺人事件の概要が記されていた……。

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良く訓練された綾辻行人ファンは綾辻行人のトリックのやり方を常に警戒しています。でもダメでした(完)。

そんなこんなでトリックに関しては相変わらずの切れ味ですが、今回は「手記から事件の謎を解く」と言うジャンルの推理としての面白味もあります。

今ここで起きている事では無い事件を推理する作品には同シリーズの『迷路館の殺人』や森博嗣の『今はもうない』など実は名作が多く、手記を書いている人物が「意図的に隠していること」や「勘違いをしていること」を念頭に置いて読んでみるのも面白いかもしれません。

7:暗黒館の殺人
暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)

暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)

 

あらすじ---

ある日、「私」は友人の浦登玄児に招かれ湖の真ん中に浮かぶ島に建つ黒一色の建物『暗黒館』を訪れた。

「ダリアの宴」と呼ばれる不気味な宴。不快な料理。そんな現世から隔絶されたかのような暗黒館でついに殺人が発生してしまう。

徐々に『暗黒館』と浦登家を覆う何かに取り込まれながらも「私」は『暗黒館』の謎を探ろうとするが……。

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新書版上下巻、文庫版だと4冊からなるシリーズで最も長大な作品。

怪奇的で猟奇的な序盤とその呪縛の正体が明かされ始める終盤、『暗黒館』のゴシックな雰囲気とその中で行われる宴はシリーズ屈指の不快な不気味さ(褒め言葉)で『人形館の殺人』とは違った怖さがあります。

ただ、俗に言われるファン向け作品であり、終盤のオチはシリーズの『十角館の殺人』か『時計館の殺人』あたりを読んでいないと楽しめません。

逆に言えば、長大ゆえに諦めてしまう人も多いようですがこのシリーズにハマっている、という方は避けて欲しくない作品です。

8:びっくり館の殺人
びっくり館の殺人 (講談社文庫)

びっくり館の殺人 (講談社文庫)

 

あらすじ---

10年前、当時小学生だった三知也の家の近所にあった『お屋敷町のびっくり館』と呼ばれる館。

中村青司という建築家が建てたとされる『びっくり館』で三知也が訪れた日に密室殺人が発生する。現在に至るまで犯人が見つかっていないこの事件の真相とは…。

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まさかの児童向け小説として書かれた8作目。それゆえ短めの内容、軽い文章、挿絵の存在など特色だけ抜き出すと至って児童向け。

しかし、この作品は読んでみるととんでもなく子供には読ませにくい綾辻節全開の作品でした。

ストレートなホラーから畳み掛けるように訪れる人間の猟奇性。児童向けであるがゆえに『人形館の殺人』や『暗黒館の殺人』のような回りくどさがなく、じわじわ鳥肌が立つのではなくボディブローのように恐怖感が襲ってきます。

児童向けなのにあのオチ……大丈夫なのかこれ……と今でも思っています。

9:奇面館の殺人
奇面館の殺人(上) (講談社文庫)

奇面館の殺人(上) (講談社文庫)

 

あらすじ---

作家の鹿谷門実はとある事情で自分と瓜二つの怪奇小説作家の代役のフリをして都内某所に建つ中村青司が建築した『奇面館』を訪れる。

この館内では仮面を被らなければいけないという奇妙なルールの中、殺人事件が発生。全員の仮面が外側から強制的に固定されている不可解な状態で鹿谷門実は推理を開始する……。

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シリーズ初とも言える探偵役、鹿谷門実の始点で進むガチガチの本格推理作。

アンフェアな部分もほとんどなく読者自身も推理を楽しむ事が出来る一方で、「運命」を題材にした幻想小説の香りもどことなくして「館」を巡る悲劇の運命というシリーズの雰囲気も損なわない作品です。

 


これで既刊である「館」シリーズを全巻紹介しました。長すぎるんだけど最後まで読んだ人いるの???

著者の綾辻行人さんによれば、島田潔の中村青司の「館」を巡る旅は次作で最終回。楽しみなような、寂しいような、そんな気持ちで最終巻を心待ちにしています。