【映画レビュー】裏切りのサーカス【85点】
映画好きほど楽しめる水面下で戦うリアルなスパイ映画
・短評
展開は地味だが全体像を把握するとスリルたっぷりになる怪作
・あらすじ
冷戦時代、コントロール(ジョン・ハート)率いる英国諜報部、通称サーカスは失態を犯しコントロールは解任、彼の右腕であったジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)も引退を余儀なくされる。
コントロールの死後、彼がサーカスの幹部の中に裏切り者がいると考えていたことを知った外務次官のオリバー・レイコン(サイモン・マクバーニー)は引退したスマイリーに残留した4人の幹部内の裏切り者の特定を依頼する…。
・感想
1974年のジョン・ル・カレによるスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を実写化した今作。
ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)
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ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン。コントロールのつけた4人のあだ名のスパイの中から裏切り者を探すと言うそそる内容に加え、『レオン』や『フィフス・エレメント』など悪役をやらせたらピカイチな俳優だと感じていたゲイリー・オールドマン主演が良い役としての主演で半端なく公開当時楽しみにしていたのを覚えています。
しかし、残念ながらこの作品は地元から電車で1時間の小劇場でしか公開せず、また予定も合わなかったため、DVD化をひたすら待ちました。
そして、遂にDVDを購入し、ワクワクしながら観た初の感想は「登場人物が多すぎてこんがらがるし、展開も地味すぎる」と言う否定的なものでした。
それもそのはず、主人公のスマイリーのもとで動く人物がスマイリー含め3人、サーカス幹部が4人(コントロールを含むと5人)、現地のスパイが2人、英国上層部が2人、敵国スパイが1人と大した説明もなく登場し、
計13人の顔と名前を早い段階で把握しなければ話を追うのが早速難しくなります。
さらに、ド派手なスパイ映画である007と違いこの作品で1番ドキドキするのは「ピーター・ギラムが自分の職場から書類をパクってくる」と言う言葉にすると地味すぎる部分なため、派手さを期待していると大変退屈な作品になります。
そのため、初回鑑賞後から再鑑賞していなかったのですが、先日再鑑賞した際にこの映画の面白さに驚愕しました。
冷戦時代、情勢次第であっさりと命を落とす諜報員たちによる、激しい情報戦。良かれと思って行動したことが敵の作戦である恐怖心。
じっくりと鑑賞するとびっくりするほど知的でサスペンスたっぷりな作品です。
今回は今作の魅力を全て語ることはしませんが、今作の魅力に気づく手助けとなったのは自分の「映画好きさ」でした。
この映画、実はハリウッド映画ではないのですが、主演のゲイリー・オールドマンを始め恐ろしいほど有名な俳優がたくさん出ています。
例えば前述したスマイリーの部下、ピーター・ギラムは『SHERLOCK』で話題となり今や大スターであるベネディクト・カンバーバッチだし、
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容疑者の1人テイラーは『キングスマン』で最近の映画好きにも馴染み深いコリン・ファース、
物語の引き金となるスパイのタッカーは『マッドマックス 怒りのデスロード』の主人公を演じたトム・ハーディであったりとまだまだ書ききれないほど豪華な出演陣です。
そのため、完全に映画好きとなった今では俳優によって13人の見分けがかなりつき、物語に集中することが出来たことがこの作品の魅力に気づくきっかけとなりました。
とにかく、渋くスリリングな情報戦の渦中に映画好きの方は潜ってみてください。