a picture is worth a thousand words

その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

【映画レビュー】アウトレイジ ビヨンド【80点】

一番悪い奴は誰だ? 

・短評

前作に対するアンサーのような作品でやっていることは派手なのに静かな印象

 

・あらすじ

加藤(三浦友和)が会長となり、山王会が新体制を迎えてから5年。
かつて大友(ビートたけし)を裏切り山王会の若頭まで上り詰めた石原(加瀬亮)など若い世代の異様な重用に古参幹部は不満を抱えていた。
力をつけすぎた山王会に一撃を与えるために動く刑事の片岡(小日向文世)は服役中の大友を仮釈放にし娑婆へと放つが本人は静かに生きていくことを望み……。

 

・感想

前作より2年後に公開された北野武監督初の続編作品である『アウトレイジ ビヨンド』。
大学在学時に映画館で鑑賞し、DVD発売時に再鑑賞し、そして最新作公開前の今回3回目の鑑賞をしました。

 

恥かしながら1、2回目に観た時はピッチングマシンでの殺し方が物珍しいくらいで、他には俳優以外にこれといった特筆すべき点は思い浮かばなかったのですが、
最新作への復習も兼ねて1作目から立て続けに鑑賞したことによってこの映画の本当の意味について気が付くことになりました。

【映画レビュー】アウトレイジ【70点】 - a picture is worth a thousand words

前作のプロットの特徴は「悪い人間ほど得をして実直な人間ほど損をする」と言う理不尽な理を描いていました。
今作単体で見れば花菱会と言う巨悪がどんどんと得をしていくため今回も前作とほぼ同じプロットを踏襲していると言えますが、前作を交えて考えるとその様相が少し変わってきます。

 

ざっくり言えば、今作は「前作で得をしたものほど酷い目にあう」映画であり単体ではやり場のないモヤモヤが残る映画でありながら、前作と合わせることでロングスパンでの因果応報を成し遂げています。
言わばこの作品は前作に対するアンサーのような作品でありながら、花菱会と大友との抗争が始まる最終章への問いかけと言う意味で前作と同じ構図も併せ持つ異形の続編でこのプロットと完成度の高さに気が付いた時には武監督の手腕にとにかく驚きました。

 

一方で全編に渡り、話の起伏が乏しく淡々と進んでいってしまうため前作のような終盤に固まったカタルシスを感じることが出来ずやや物足りなく感じてしまう部分もありそこがややマイナスでした。

 

しかし、ラストシーンは全てが終わった後の大友を喋らせない好采配により「え?ここで終わりなの?」感を見事に薄めていました。


また「一番悪い奴は誰だ?」のキャッチコピーも物語の主題を前作に対する「ケジメ」に向けていて、あのシーンで終わらせた意味をはっきりさせる良キャッチコピーだったと思います。

 

初の続編作品でありながら、前作を踏襲し、更にアンサーの意味まで持たせる見事な出来に最終章も期待せざるを得ず、今から楽しみです。