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その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

【映画レビュー】氷菓【65点】

かなり原作に近い誠実な作りの実写版 

映画チラシ 氷菓 山崎賢人 広瀬アリス 小島藤子

映画チラシ 氷菓 山崎賢人 広瀬アリス 小島藤子

 
・短評

気にならない程度のオリジナル描写に留め展開は原作に忠実。

 

・あらすじ

省エネと言う生き方をモットーにする折木奉太郎山崎賢人)は廃部寸前の古典部への入学を姉から強制される。
しかし、部員ゼロと聞いていた部室には莫大な土地を持つ豪農の家の才女、千反田える広瀬アリス)がいた。
ひょんなことから千反田に興味を持たれ親友の福部里志岡山天音)と共に古典部に入ることになってしまった折木だったが、千反田が古典部に対し特別な事情を持っていること知り……。

 

・感想

米澤穂信による同名小説を今年の実写化映画の顔、とすら言える山崎賢人主演で映画化した作品。

 

過去にこのブログで『愚者のエンドロール』を紹介したこともあるように、僕はこの原作シリーズが大好きで深夜アニメ化される際は深夜アニメと言うだけで強い拒否感を抱いたことすらある迷惑な原作厨でした。

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ですが、アニメ版の『氷菓』は原作から逸脱することはほとんど無い上に、原作で分かりにくかった部分をしっかりと補うような演出もある良作で原作ファンにも納得の作品だったのです。

 

と、そんな前例が同作品であるにも関わらず実写化を完全に舐め切っていた僕なのですが、映画館に足を運び良い意味で驚かされました。

 

尺の都合で台詞や端の設定に変更や付け足しはあるものの、本筋に関しては殆どの面で原作に忠実な実写化で原作に対する理解を深く感じることが出来ました。

 

特にファンの間で警戒されていた登場人物の演技面においてもそのクオリティは高く、山崎賢人折木奉太郎はこれまでの実写化で一番のハマり役に感じましたし、鑑賞前にはイマイチに感じていた広瀬アリスも折木がその目力に引き込まれる説得力を感じさせる目力でした。
その他のキャラにおいても演技は原作で感じた印象そのものが実写として行われていると思えるほどでしたし、原作ファンに括らずアニメ版のファンにも充分オススメできるほどだったと思います。

 

しかし、ここまで褒めておいて65点と言うのには少し理由があります。


原作を読んでいた時から感じていたのですが、この作品シリーズの特に第1作である『氷菓』はセリフ回しが高校生とは思えないほど大人びているのです。
いや、「粋人(すいじん)」なんて言葉、日常会話で聞いたことも言ったこともないですし、大人びているのレベルを越えて随分と意識が高いです。

原作からそこそこの違和感のあったセリフや文章を、実際に実写で映像化されるとその違和感はさらに強くなります。
俳優陣の演技のおかげで痛々しさは感じませんが、このような度々の違和感によって感情移入がしにくかったのはややマイナス点でした。(かと言ってどんな変更なら良かったのかも思い浮かばないのですが……)

 

そして、これに関してはもう完全に僕の問題なのですが、この米澤穂信による『氷菓』から始まる古典部シリーズの大ファン(特に2作目と4作目)ではあるのすが、僕はあまり1作目は好きではなかったりします。
ミステリーとしての部分にこじつけ感がぬぐえず、それは実写化されてもなお違和感がありました。
特に一番最初の推理である「部室の密室の謎」は尺をそこそこ使っていただけあって、その割にある人の行為が非効率的かつ危険度が高く納得できるものではありませんでした。

 

とは言え、原作にかなり忠実に作られた今作は、『氷菓』が好きな人には見て欲しいほどの原作への敬意が込められた作品なので、気になった方はぜひ劇場に足を運んでみて下さい。