新本格ミステリと作家アリス(火村英生)シリーズ文庫版全作品紹介・前編
犯罪(小説)が好きな皆さん
こんにちは、いとです。
自分も犯罪(小説)が大好きで学生時代はよく犯罪(小説)に明け暮れたものです。
そのせいか運転免許証の写真が殺人後逃亡中の犯罪者のようになってしまいましたが今年の更新で左右で違う寝癖のついているエキセントリックな男になることに成功したのでもう大丈夫でしょう。
そんなことはともかく、
皆さんは『新本格ミステリ』というジャンルをご存知でしょうか?
推理小説の始祖であるエドガー・アラン・ポーが作り出した謎解きを中心とした推理作品のサブジャンルを『本格ミステリ』と呼ぶのですが、
日本では『砂の器』で有名な松本清張が注目を集めた世情を取り込み事件の背景に物語の中心となる『社会派ミステリ』が流行し、本格ミステリは衰退していきました。
しかし、1987年に登場した綾辻行人や有栖川有栖らによって再び注目を集めると次々と『本格ミステリ』を書く作家達が登場し勢いのあるジャンルとして『新本格ミステリ』と呼ばれるようになりました。
今回はそんな『新本格ミステリ』の先駆けである有栖川有栖の書く作家アリス(火村英生)シリーズの文庫版発売作品を全てご紹介したいと思います。
と、その前にまずはこのシリーズの主人公二人を紹介したいと思います。画像は漫画版の物です。
有栖川有栖、通称アリス。
物語の語り手であるワトソンポジションの関西弁を話す推理小説作家。披露する推理、想像する事件の概要はほとんど的はずれであるが、もう一人の主人公である火村に犯罪現場に呼ばれる。
親友である火村の精神の崩壊を恐れており、何かあったら助けてやりたいと考えている。
火村英生。
このシリーズの探偵役にあたる存在。犯罪社会学を専攻する准教授であり、研究の一環として殺人現場に赴いては事件を解決している。
人を殺したいと言う強烈な殺意を覚えた事がありその事が彼を事件に向かわせている。
と、簡単に説明させて頂いたのですが、この漫画の画像30代独身という設定があるはずなんですがイケメンすぎじゃないですか?こんなイケメンが独身なら俺が独身なのも頷けますわ!!
一作目『46番目の密室』。
45作の密室物を書いた大物作家が新作の執筆中に密室の中で殺害された。クリスマスの会合に招待されていた火村とアリスはこの謎に挑む・・・。
二作目『ダリの繭』。
シュールレアリズムの巨匠、サルバドール・ダリに憧れた宝石チェーンの社長が自宅のフロートカプセルの中で遺体となって発見された。現場に残る多くの不可解な点から火村とアリスは犯人を推測する・・・。
記念すべき作家アリスシリーズ始動の二作品。
同じく有栖川有栖という作家志望の大学生が活躍する学生アリス(江神二郎)シリーズと対をなすシリーズでありながら、
孤立した島、孤立した村、何かを隠す新興宗教団体の城の中という舞台と最後に読書への挑戦状を残す推理小説界では華々しい内容が注目を集める学生アリスシリーズに比べ地味という意見が多いです。
まあ、実際その通りなんですがジュブナイル的要素とパズラー要素が多めの学生アリスに比べ、人間の心情面を多めに描いており大人な雰囲気を感じさせてくれます。
大人な雰囲気と言えば全く関係ないんですが、最近この検索ワードで来た方がいらっしゃいますが
多分お望みの情報はありません。。。
三作目『ロシア紅茶の謎』。短篇集。
新進気鋭の詩人が自宅でのパーティ中、紅茶の中に入っていた毒により死亡。捜査に入る火村とアリスだったが、現場は不自然なことだらけで・・・。(ロシア紅茶の謎)
日本で特に人気を集めるエラリー・クイーン推理小説作家が書いた作者と同名のエラリー・クイーンという推理小説作家が活躍するタイトルに国名が入る国名シリーズを有栖川有栖が模したシリーズの第一弾。
また、これ以降作家アリスシリーズは短篇集が主軸となり様々な雰囲気の作品を楽しめるようになります。
『ロシア紅茶の謎』ではエラリー・クイーン、『屋根裏の散歩者』では江戸川乱歩と推理小説好きに対するサービスも欠かしません。
『ロシア紅茶の謎』は有栖川有栖にしてはトリックが割と奇抜だった気も・・・。
ロシア紅茶とは紅茶の中にジャムを入れたり、ジャムを舐めながら紅茶を飲んだりすることです。皆さんも試してみてくださいね。
あ、違いますよ。
シャム・シェイドは関係ありませんよ。
四作目『海のある奈良に死す』。
ある日、同業者の赤星に出会ったアリスは彼の口から「今から海のある奈良に行く」と聞く。翌日「海のある奈良」として有名な福井県小浜市の海岸で死体となって赤星は見つかった。
警察の捜査でも明らかにならない彼の足取りをアリスは手繰っていく・・・。
五作目『スウェーデン館の謎』。
童話作家と美しいスウェーデン人の妻が住むログハウスに招かれた客人が何者かに殺害された。たまたま隣のペンションに宿泊していたアリスはこの事態を見過ごせず火村を呼びつける・・・。
この二つの作品の特徴は旅とすれ違い。
実在する場所を舞台にすることが多い推理小説は大概の場合時刻表を使ったアリバイトリックを題材とした物が多く、あんまり時刻表物が好きでない自分は辟易していたのですがこのシリーズの旅作品はしっかりと「本格」をしています。
また、『海のある奈良に死す』は何故小浜市が「海のある奈良」と呼ばれるのか、や人魚伝説のうんちくも中々面白いです。
事件の内容も何か一つすれ違いが起きなければ人が死ぬことは無かった、という重い内容を描いていて思うところも多いです。
旅といえば以前社員旅行で名古屋に行ったのですが、不思議な建物やお店が多かった気がします。
たこ焼きの元祖は大阪じゃないんでしょうか・・・。開いてなかったのが惜しまれます。
六作目『ブラジル蝶の謎』。短篇集。
亡くなった資産家の弟が何者かに殺害される。現場は天井に資産家が趣味で集めていた蝶の標本が大量に打ち付けられている異常な様子だった・・・。(ブラジル蝶の謎)
七作目『英国庭園の謎』。短篇集。
自宅の敷地に巨大な英国庭園を持つ富豪が開催した暗号解読ゲームの最中、富豪が殺されてしまう。事件のカギが暗号にあると読んだ火村とアリスは英国庭園の中を帆走する・・・。(英国庭園の謎)
『ブラジル蝶の謎』では『蝶々がはばたく』がオススメで阪神淡路大震災を題材にしている部分もあり、東日本大震災の後だと当時の様相が幾分か分かります。
『英国庭園の謎』では『ジャバウォッキー』がオススメで犯罪を犯そうとする人間を思いとどまらせようとする作品。火村の性格や思いが分かる作品です。
オススメといえばオススメしたいのはテレビ東京で再放送中の『藤原竜也の一回道』。
『水曜どうでしょう』を数倍薄めたような作品といえば分かりやすいでしょうが、とにかく藤原竜也の人となりが分かって面白いです。
八作目『朱色の研究』。
数年前に起きた未解決事件の犯人を突き止めて欲しい。自身のゼミ生に懇願された火村は事件の再調査を行う。しかし、それを待ち構えていたかの如く新たな殺人が発生してしまう・・・。
タイトルの『朱色の研究』は探偵としては世界的に有名なシャーロック・ホームズシリーズの第一作『緋色の研究』を模倣した物だと分かります。
内容は『緋色の研究』を模倣しているとは思えませんが、全体に朱色がかった雰囲気が続き犯人の動機に至るまで夕暮れの儚さを感じます。
九作目『ペルシャ猫の謎』。短篇集。
ペルシャ猫を飼う一人暮らしの男が何者かに襲われ昏倒した。命に別状は無かったもののその男の証言から事件は謎だらけになってしまう・・・。(ペルシャ猫の謎)
十作目『暗い宿』。短篇集。
元旅館の取り壊し作業中に人骨が発見された。つい数週間前その宿に泊まったアリスはその時何かを掘るような音を聞いていて・・・。(暗い宿)
『ペルシャ猫の謎』『暗い宿』の両方に言えることは無常な雰囲気が漂っているということでしょうか。
『切り裂きジャックを待ちながら』『ホテル・ラフレシア』は特に顕著で有栖川有栖の作品によく見られる情けのないオチは見ていて辛くなります。
見ていて辛くなると言えば実写版『蟲師』です。
恵まれた原作から何故この作品が生まれたのかと考えると自然と涙すら出てきます・・・。
さて、ここまで十作ほど紹介しましたが、まだ半分なんです。
そのうち続きもご紹介させていただきますので今日は・・・