【映画レビュー】ダンケルク【70点】
戦地から脱するため、仲間を救うため、戦地で動く男たち
・短評
ややスケールの大きさが伝わらなかったが前線の恐怖感が嫌と言うほど伝わる作品
・あらすじ
ドイツの猛攻によりフランス北部のダンケルクに取り残されたイギリス・フランス連合軍40万人の兵士たち。
絶望的な状況下からの脱出を図る兵士、兵士を救うためダンケルクへ向かう商船、救援のため戦地へ向かうパイロット、それぞれの戦いが始まる…。
・感想
戦争を知らない世代の僕ですが戦争映画は比較的よく観ます。
実際に戦地に行った人が鑑賞し、失神する人まで出たとされる『プライベート・ライアン』や戦車乗りの話を描いた『フューリー』、
そして今年にはアカデミー賞で話題となった『ハクソー・リッジ』など様々な戦争映画で、戦地の恐ろしさを感じてきました。
しかし、『インターステラー』や『ダークナイト』で有名なクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』では全く違うリアルな「戦地」を感じることができました。
メインで描かれることになる、戦地からの脱出を目指す兵士のトミーは『プライベート・ライアン』や『フューリー』で描かれるような一流の軍人でも無いし、『ハクソー・リッジ』のように信念を持っているわけではありません。
そんな一兵卒がただ故郷に帰りたい想いを胸に次々と真横にいた兵士すら死んでいくような絶望的な状況下でもがきます。
映画開始10分以内からその絶望的な状況の演出が上手く「自分が最初に死ななかったのはただ運が良かっただけ」と突きつけてくるような展開が続き、
上映時間の間トミーに寄り添った鑑賞者にも終盤のとある人物のセリフが活きてきます。
一方で、戦闘機スピットファイアに乗るパイロットのファリアの格好良さにも感銘を受けました。
劇中でファリアは「とある決断」をするのですがそれを促すようなセリフは一切なく、
彼が何を考え行動に移したのかが全て観ている人間に委ねられていたことがこの映画の最大の特徴なのではないかと思います。
しかし、「戦地で戦う人の目線から描いた映画」と言うコンセプトからは仕方ないことなのですが、
「ダンケルクで行われた最大規模の脱出作戦」と言う印象はどうしても薄く、30万人が脱出したと言われても体感的には数千人も逃げてないような気がして、
スケールの大きさや奇跡の脱出さはあまり伝わってきませんでした…。
戦争を俯瞰ではなく、主観で捉えた間違いのない戦争映画ではありますが、
実話や脱出作戦の華麗さを期待する人には期待外れな作品となってしまうかもしれません。