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その時思った気になる事を忘れないためにもこういう場所に書いてみたりしちゃいます。

【映画レビュー】ユリゴコロ【75点】

拠り所を求め彷徨う殺人者の切ない一生 

・短評

殺人鬼に徐々に感情移入する物語と吉高由里子のハマりっぷりが凄い

 

・あらすじ

突如失踪した婚約者と病を患う父に悩む亮介(松坂桃李)は父の部屋で一冊のノートを見つける。

そのノートには人を殺しながら生きてきた美紗子(吉高由里子)と言う女性の生い立ちが書かれていて…。

 

・感想

沼田まほかるによる同名小説を吉高由里子主演で実写化した映画。

ユリゴコロ (双葉文庫)

ユリゴコロ (双葉文庫)

 

最近はあまり小説を読まないこともあり、原作は未読で映画自体も情報をほとんど仕入れずに映画を観に行ったのですが、これがなかなかのアタリでした。

 

序盤は美紗子が生き物や人の死を求め行動する猟奇殺人鬼的行為が描かれ、その生々しい描写も重なり美紗子と言う人物に不快感が湧いてくるのですが、

美紗子が自分についてを理解し、他人に拠り所を求めるようになり始めてからは不思議と美紗子の心に感情移入をし始めました。

その後、彼女がたどる人生は人を容赦なく殺す殺人者であったが故に切なく中盤あたりでは何回も心を締め付けられました。

 

この映画になくてはならないのは、言うまでもなく主演の吉高由里子であることは間違いがないのですが、

松山ケンイチや現代パートの主人公である松坂桃李もとても素晴らしい演技をしています。

何よりも驚いたのは、ドラマ『ウロボロス』以来好きな俳優である清野菜名がかなり重要な役どころで出演していることでした。

 

ドラマ『ウロボロス』や『暗黒少女』でもそうでしたが、清野菜名は可愛らしいルックスに反し裏がありそうな役どころがとにかく上手く、

また原作を読んでいなく映画の下調べすらしていない今回の場合では、突如恋人の前から姿を消す役として出てきた清野菜名がどうなるのか全く読めずドキドキ出来ました。

 

しかし、問題点もありました。

それは物語の細部が雑なことです。

 

目撃者を残しまくってそうな殺人の数々や、探偵もびっくりな調査能力、偶然に頼りまくってる物語構成など細部をツッコミ始めたらきりがなくなるほどにツッコミどころがあり、

家に帰ってよく考えるとちょっとおかしくないか、と次々浮かんでしまうほどでした。

まあ、物語の主題とは違うので些細と言えば些細ではあるのですが……。

 

正直、まともな恋愛映画を見ない僕ですが、この作品のように一癖ある作品は大好きで、愛する人と出会ってもなお必要があれば手を染める美紗子が美しく、また心を揺さぶられる映画でした。

【映画レビュー】RWBY Volume4【80点】

失った人たちのために、まだいる人たちのために

・短評

Volume3までを観た人たちの心に否応がなく刺さる再起の物語

 

・あらすじ

ビーコンアカデミー襲撃事件によりそれぞれが何かを失いバラバラになったチームRWBY

自分に出来ることを求めルビー(声:早見沙織)は仲間を失ったチームJNPRと合流し次の襲撃予想地点へと歩みを進める……。

 

・感想

【アニメ】RWBY Volume1-3:The Beginning - a picture is worth a thousand words

RWBY Volume3』を劇場で観てからどれだけ今日を待ち望んだか……となるくらい公開を楽しみにしていました。

分かってます。RWBYシリーズは有志による日本語字幕付きの公式動画が全て無料でYouTube等に配信されているため、どうしても観たければそれを見れば済みます。

しかし、最初に観たきっかけがこの日本語吹替版だったのでどうせなら全部日本語吹替版で観たい!と思い我慢をし続け、公開日に劇場で鑑賞しました。

 

結論としては、やはり『RWBY』と言う作品は少年漫画的王道をしっかりと歩んでいるため間違いのない面白さがありました。

 

常々、この作品シリーズを何かに例えるならまだ完結していないので何とも言えませんが、現状ではスターウォーズがやりやすいと思っています。

Volume1から3まででは悪の策謀にハマり大打撃を受け、Volume4から反撃のため再起をあげる、と言う流れはスターウォーズに類似した部分もあり部数を問わなければ少年漫画的とも言えます。

 

そして、今回のVolume4は再起の物語。

 

主人公チームであったRWBYのメンバー、ルビー、ワイス、ブレイク、ヤンの4人を中心にそれぞれの想いを胸に再起するまでを描いているのですが、

僕はやはりルビーが合流することになるチームJNPRに注目してしまいます。

 

何よりも大事でかけがえのないものをビーコン襲撃で失ったJNPRのリーダー、ジョーン。

しかし、寄り添ってくれる2人とルビーの4人で歩みを続けるジョーンは以前までのひょうきんな落ちこぼれとは違い、だからこそ僕も不安に感じ胸が痛くなりました。

一方で『RWBY』のメインチームのひとつであるJNPRのメンバーでありながら前作までファンにすら「影薄すぎて名前を覚えていない」とまで言われていたレンも過去を乗り越える格好いい要素満載。

傷ついたジョーンに寄り添う姿を見て今作でますますJNPRが好きになりました。

 

10月14日から最新シーズンのVolume5が公式から配信される『RWBY』シリーズ。

Volume4から一新された各キャラの服装もとにかく格好いいので興味がある方はご覧になってみてください。

【日本ドラマ】勇者ヨシヒコと導かれし七人

ありがちだが不覚にも感動してしまうラスト 

・短評

全シーズンで一番攻めたギャグを連発する怖いもの知らずの完結編(?)

 

・あらすじ

魔王バルザス(声:中井和哉)を倒したヨシヒコ(山田孝之)、メレブ(ムロツヨシ)、ムラサキ(木南晴夏)、ダンジョー宅麻伸)の4人だったが、仏(佐藤二朗)によればバルザスは知事のようなものだった。
さらに上位の魔王ゲルゾーマ(声:堤真一)を倒し、世界を平和にするため、ゲルゾーマの弱点を突くことの出来る仏に選ばれし7人の仲間を集める旅が始まる……。

 

・感想

【日本ドラマ】勇者ヨシヒコと魔王の城 - a picture is worth a thousand words

【日本ドラマ】勇者ヨシヒコと悪霊の鍵 - a picture is worth a thousand words

ついに勇者ヨシヒコシリーズのサードシーズンを再鑑賞しました。


ファーストシーズン、セカンドシーズンに比べ明らかに予算のアップを感じるCGや特殊効果に「初志を忘れていったら嫌だな」と感じていましたが、このシリーズに関して言えばその不安は杞憂に終わりました。

 

前シーズンの『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』では有名な映画ネタやドラマネタが多く使われていましたが、シリーズも長く続きそろそろ安定を求め始める第3シーズンとなり危険なネタも影をひそめるだろうなと思っていましたが、
協賛していない企業のネタを連発し、挙句の果てには他局までも小馬鹿にするという謎の挑戦心が数話ごとに見え隠れします。

 

そんな謎の挑戦心以外は前シーズンまでとほぼ同じノリと、シリーズ通しての決まり事を踏襲し、今や完全なヨシヒコファンの僕は安心して鑑賞することが出来ました。


特にこのドラマの特徴の一つである「豪華な役者を訳の分からないポジションに配置する」部分では第8話の柳楽優弥の使い方にびっくりしました。

2004年に『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭の男優賞を取得後、どんな役でも引き受ける演技派として活躍を続ける柳楽優弥ですが、第8話では出演していることにすら気が付きませんでした。
スタッフロールを見ながら「今回は食いしん坊ばんざいと片瀬那奈くらいかー」なんて思っていたら「柳楽優弥」の文字を見つけ心底驚きました。こんな素晴らしい俳優をあれだけの出演時間のために起用するなんて……(褒め言葉)。

 

他にも相変わらずメレブの何の役にも立たない呪文は大好きで特に「フタメガンテ」の回は歴代でも一番笑った気がします。

 

そして、個人的に語れずにはいられないのはこのドラマのラストの展開。
毎シーズン毎シーズン、意外とラストは真面目にやるのですが今回はその中でも割とダーティな展開かつ、これまでの旅を総括するような内容でありがちではあるのですが3シーズンも続いてきたからこその感動と切なさを感じました。

 

人気が出次第続シーズンが出るのかもしれませんが、仏に選ばれし「勇者ヨシヒコ」の冒険の終わりと始まりを描くラストとして秀逸なものだと思います。

【アニメ】RWBY Volume1-3:The Beginning

運命の歯車は止められない

・短評

熱い少年漫画的展開とそれを覆す衝撃の終盤が大好きだが、地上波版はカットが多いのが玉に瑕

 

・あらすじ

人類とグリムと呼ばれる怪物との長い長い戦いが続く世界。
グリムを討伐するハンターと言う職業に憧れる少女ルビー(声:早見沙織)はハンターを養成する学校、ビーコン・アカデミーへの入学が決まる。
しかし、一匹狼を気取るルビーは姉のヤン(声:小清水亜美)以外の知り合いもいないまま入学の日を迎え、初対面の社長令嬢ワイス(声:日笠陽子)と一触即発の状況を作り出してしまう。
ブレイク(声:嶋村侑)と名乗る口数の少ない少女の仲裁で何とかその場をしのぐルビーだったが、不思議な縁からルビー、ワイス、ブレイク、ヤンの4人で組まれたチーム「RWBY」のリーダーを務めることになってしまう……。

 

・感想

Twitterや「FILMAGA」の記事で推し続けた海外製アニメ『RWBY』。
ワーナーブラザースジャパンが日本の人気声優を起用し吹き替えしたバージョンが総集編としてVolume1からVolume3まで製作されていましたが、
10月7日に『RWBY Volume4』の劇場公開に先駆けてVolume3までをまとめた『RWBY Volume1-3:The Beginning』が地上波連続アニメとして放映されました。

 

取りあえずVolume1とVolume2までの魅力や見どころは「FILMAGA」で書かせていただいた記事を参考にして欲しいのですが、
2週間の限定公開!日本アニメ業界が激震した、熱い演出が話題の「RWBY」最新作 | FILMAGA(フィルマガ)
Volume1・2の魅力はざっくりと言えば「少年漫画的」な部分です。


チーム「RWBY」を始めとした4人ともう一人の主人公とされるジョーンを中心としたチーム「JNPR」の4人の成長や人間模様、そして変形武器を使用したアクションの全てが高クオリティで少年漫画にハマったことのある人は間違いなくハマる内容でした。

 

しかし、Volume3に入り物語は一転。
「少年漫画でトーナメントを始めたら終わり」と揶揄されるほど嫌われるトーナメント展開を始めドキドキしたものの、今作の最大の山場であるVolume3は数多のファンに大打撃を与えてきます。

 

それまではローマン・トーチウィックと言う同じ敵とばかり戦闘が続き、アンパンマンに対するバイキンマン的な安心感や情けない敵と言う印象だったのですが、Volume3で彼らの陰謀とえげつない行動が本格化し始めます。
そして、ビーコン・アカデミーが隠していた世界の真実が明らかになり、トーナメントは波乱の展開を迎え、ここまでを鑑賞した人たちの中には愛着を覚える人もいたであろうキャラが次々と命を落とす展開が始まり心穏やかにはいられなくなる恐ろしい内容を目の当たりにしました。

僕もVolume3で命を落とすキャラが大好きだっただけに、劇場で観た際には呆然としていました。だってVolume1・2は熱い熱い展開だったんですよ?

と、まあ、本当に熱くそして悲しいこの作品が地上波で話題を集めたのは本当に嬉しいのですが、やはり地上波版はカットがとにかく激しかったです。
才能も力も感じさせないが人の信頼を集めるジョーンと、天才的センスを持ちもてはやされるが孤独なピュラとのやり取りが大幅にカットされるのには正直納得が行きませんでした。

 

しかし、10月7日に公開される最新作への復習としては充分な内容だったので、とにかく今から最新作が楽しみです!

【映画レビュー】アウトレイジ ビヨンド【80点】

一番悪い奴は誰だ? 

・短評

前作に対するアンサーのような作品でやっていることは派手なのに静かな印象

 

・あらすじ

加藤(三浦友和)が会長となり、山王会が新体制を迎えてから5年。
かつて大友(ビートたけし)を裏切り山王会の若頭まで上り詰めた石原(加瀬亮)など若い世代の異様な重用に古参幹部は不満を抱えていた。
力をつけすぎた山王会に一撃を与えるために動く刑事の片岡(小日向文世)は服役中の大友を仮釈放にし娑婆へと放つが本人は静かに生きていくことを望み……。

 

・感想

前作より2年後に公開された北野武監督初の続編作品である『アウトレイジ ビヨンド』。
大学在学時に映画館で鑑賞し、DVD発売時に再鑑賞し、そして最新作公開前の今回3回目の鑑賞をしました。

 

恥かしながら1、2回目に観た時はピッチングマシンでの殺し方が物珍しいくらいで、他には俳優以外にこれといった特筆すべき点は思い浮かばなかったのですが、
最新作への復習も兼ねて1作目から立て続けに鑑賞したことによってこの映画の本当の意味について気が付くことになりました。

【映画レビュー】アウトレイジ【70点】 - a picture is worth a thousand words

前作のプロットの特徴は「悪い人間ほど得をして実直な人間ほど損をする」と言う理不尽な理を描いていました。
今作単体で見れば花菱会と言う巨悪がどんどんと得をしていくため今回も前作とほぼ同じプロットを踏襲していると言えますが、前作を交えて考えるとその様相が少し変わってきます。

 

ざっくり言えば、今作は「前作で得をしたものほど酷い目にあう」映画であり単体ではやり場のないモヤモヤが残る映画でありながら、前作と合わせることでロングスパンでの因果応報を成し遂げています。
言わばこの作品は前作に対するアンサーのような作品でありながら、花菱会と大友との抗争が始まる最終章への問いかけと言う意味で前作と同じ構図も併せ持つ異形の続編でこのプロットと完成度の高さに気が付いた時には武監督の手腕にとにかく驚きました。

 

一方で全編に渡り、話の起伏が乏しく淡々と進んでいってしまうため前作のような終盤に固まったカタルシスを感じることが出来ずやや物足りなく感じてしまう部分もありそこがややマイナスでした。

 

しかし、ラストシーンは全てが終わった後の大友を喋らせない好采配により「え?ここで終わりなの?」感を見事に薄めていました。


また「一番悪い奴は誰だ?」のキャッチコピーも物語の主題を前作に対する「ケジメ」に向けていて、あのシーンで終わらせた意味をはっきりさせる良キャッチコピーだったと思います。

 

初の続編作品でありながら、前作を踏襲し、更にアンサーの意味まで持たせる見事な出来に最終章も期待せざるを得ず、今から楽しみです。

【映画レビュー】亜人【70点】

実写化であることが疎ましく思えるほどのアクション

映画 亜人 オリジナル・サウンドトラック

映画 亜人 オリジナル・サウンドトラック

 
・短評

綾野剛のアクションのクオリティが邦画レベルじゃないほどの格好良さ

 

・あらすじ

死ぬことで完全な姿にリセットされる不死身の新人類、亜人
轢死たことで亜人だと分かり、政府に囚われ残虐な人体実験を受ける永井(佐藤健)は亜人の佐藤(綾野剛)に助け出される。
しかし、佐藤の残忍な性格を知った永井は佐藤に反旗を翻す……。

 

・感想

桜井画門による同名漫画を佐藤健綾野剛主演で実写化した作品。


叩かれないように先に言っておきますが、僕は原作及びアニメを見たことも読んだこともありません。
ただ何となく予告編で面白そうだと思ったので映画館に足を運んだのですが、これがなかなかに興奮できるものでした。

 

映画が始まり、簡単な説明が入ると早々に綾野剛演じる佐藤による銃撃戦が始まりますがこの銃撃戦がとにかく凄いです。
キアヌ・リーヴス主演で話題となった僕も大好きなガンアクション映画『ジョン・ウィック』を彷彿させる綾野剛の動きを初っ端から見せられテンション上昇。
その後も、特に解説なくそれなりに戦闘力のある佐藤健綾野剛と戦うシーンとなり、「凄いなこの邦画、まさかずっと戦いっぱなしか?」と感じました。

 

しかし、黒い幽霊が出てきてから「あれ?これなんか思ってたのと違うぞ」となり始めたのを覚えています。


黒い幽霊とは亜人が出すことの出来る使い魔のようなもので亜人にしか見えることは出来ませんが、攻撃も防御もこなす自身の分身のようなものでジョジョの奇妙な冒険で言う「スタンド」です。
この黒い幽霊を主人公が出すことが出来てからは戦闘がCGで描かれる黒い幽霊戦がメインとなり、せっかくの主演2人の良い動きが活かされない生殺しのような状態が続きます。

 

アクションがメインなためか、物語は大幅にカットされていそうなので何とも言えません。
政府から身を隠す亜人物と言えば今年実写版が公開された『東京喰種』あたりとも色々と被ってそうな雰囲気もありましたし、物語は特にこれといった感想はわきませんでした。

 

その後もSAT戦であったりととにかく銃撃戦や肉弾戦の動きは格好良いのですが「なぜ黒い幽霊を使わないんだろう」との疑問が頭にチラついたり、
AKB48川栄李奈城田優の動きも良い部分を感じただけに、原作の要素に引っ張られてしまうのは少しもったいないと感じてしまいました。

 

ただ、終盤の佐藤健綾野剛の戦闘シーンで黒い幽霊と本体が別々に戦闘を行うシーンであったり、川栄李奈の黒い幽霊の足を軸に滑るシーンなどは正直格好良いと感じたので、黒い幽霊も上手くアクションの質に加われば更に名作になったのに…と色々思う映画でした。

【映画レビュー】るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編【80点】

原作の中でも特に人気の高いエピソードを実写化した意欲作

・短評

多様な殺陣と藤原竜也の存在感を楽しめる漫画実写化邦画の成功例

 

・あらすじ

かつて影の人斬り役として活躍した緋村剣心佐藤健)の後任の志々雄真実(藤原竜也)はその行き過ぎた野心を危険視され明治維新の最中に暗殺された。
しかし、身体を焼かれてもなお生き延びた志々雄はその野心を拡大させ明治政府の転覆のため動き出した。
事態を危険視した政府は神谷活心流道場に身を寄せる緋村剣心に志々雄の討伐を依頼する……。

 

・感想

週刊少年ジャンプで連載されていた人気漫画『るろうに剣心』の実写化2、3作目となる作品。
原作の中でも特に人気である『京都編』を題材に前後2部作で描いた今作ですが、何度観ても実写化の成功例との太鼓判を押さざるを得ません。

 

まず最初に批判的な意見を書いておきます。
この作品、何と言っても尺が足りていません。

 

「原作から〇〇を削るな!」などは良く聞く実写化に対する非難ですが、個人的にこの意見には全く同調できません。
何せ原作と映画は別物なのですから、何を削ろうが何を加えようが1本の筋が通っていれば良いと僕は考えています。

 

ですが『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』はそれにしても尺が足りなさ過ぎて原作を読んでいない人にさえ、その尺の足りなさが如実に伝わる内容となってしまっています。

 

具体的に言うならば志々雄真実が率いる最強の剣客者たちである十本刀は実写版にも登場しますが、セリフが2分以上あるのは5人くらいです。
正直残りの5人のうち2人くらいはいつやられてたのかすら良くわからず、取りあえず登場だけはさせました感が強く残ります。

 

十本刀の不遇はまだ良いとしても、メイン各である左之助の扱いの雑さもとにかく気になって仕方ありません。
実写の都合上、明らかにファンタジー感のある技(志々雄の炎以外)を排除したため彼のメイン技である「二重の極み」は登場しませんが、それにしても彼の成長エピソード全削りは初見でも違和感が残ります。
公開の後にネットでも言われていた通り、左之助の扱いが雑なために最終戦では「決戦の場に居合わせたチンピラ」以上の何者でもなく、原作未読の鑑賞者すら同じ感想を持ったとすら言われています。

 

しかし、以上のマイナス要因があってもそれを覆すプラスの要素がこの作品にはあります。

 

それは何と言っても1作目から人気を集めていた殺陣の進化と志々雄役の藤原竜也の圧倒的な存在感です。

 

ワイヤーをガンガン使った殺陣と言うのは『グリーン・ディスティニー』や『HERO』のような中国映画の独壇場でしたが、『るろうに剣心』は世界中で絶賛され日本にもそのブームが訪れました。


中国映画との殺陣の絶対的な差は「ファンタジー感を抑えたあくまでも重力的な殺陣」な部分だと思っています。

 

もちろん、登場するキャラの多くは人間には不可能な動きやファンタジックな戦闘方法をしますが「できなくもなさそう」と思わせてくれる重力感が殺陣の格好良さに繋がっています。

また、前作とは違い殺陣の種類も大人数戦・格闘・トンファー・二刀流など多様で特に後編の志々雄戦における4対1の演出は原作を実写に落とし入れた最高の形だと思っています。

 

そして、この映画のもう一つの魅力である藤原竜也の存在感。


「志々雄真実」と言うキャラの魅力と、藤原竜也らしい演技が重なる考え得る限りの最高な志々雄真実のキャストで、純然たる悪なのにも関わらず最後は物凄く格好良いと言うカリスマを見事に再現しています。

本当に本当に大好きな実写化の1つで、この映画をまだ観ずに邦画を叩いている人にはぜひ観て欲しい作品です。